人材確保等支援助成金「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」は、賃金規定や人事評価制度などの雇用管理制度を整備し、離職率の低下という成果を出すことで支給を受けられる助成金です。申請は「計画認定→制度導入→離職率評価→支給申請」という4段階で進み、計画認定を後回しにすると対象外になる点が最大の注意点です。本記事ではこの手順を1つずつ整理します。
人材確保等支援助成金「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」とは
人材確保等支援助成金は、従業員の職場定着や人材確保に取り組む事業主を支援するための厚生労働省の助成金で、複数のコースで構成されています。そのなかで「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」は、賃金や評価、職場環境などに関する「雇用管理制度」を新たに整備し、実際に運用することで従業員の離職率を下げた事業主に対して助成が行われる仕組みです。
制度の対象となる事業主は、雇用保険適用事業所の事業主であり、あらかじめ労働局の認定を受けた「雇用管理制度整備計画」に基づいて制度を導入する必要があります。計画の認定を受けずに制度を先に整備してしまうと、原則としてその制度整備は助成の対象にならないため、申請の順序を正しく理解しておくことが重要です。
このコースは、単に制度を作れば終わりというものではなく、「制度を整備した結果として離職率が下がったかどうか」を一定期間後に評価し、その成果を確認したうえで支給申請を行う、成果連動型の設計になっている点が大きな特徴です。制度全体の位置づけや他コースとの違いについては、人材確保等支援助成金2026年版完全ガイドで全体像を整理していますので、あわせて確認しておくと申請の流れがより理解しやすくなります。
申請の流れ全体像|雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの5ステップ
このコースの申請は、大きく分けて次の5つのステップで進みます。それぞれのステップに提出書類や審査があり、順番を飛ばして進めることはできません。
| ステップ | 内容 | 主な提出先・タイミング |
|---|---|---|
| STEP1 | 雇用管理制度整備計画の作成・認定申請 | 制度導入前に管轄の労働局へ提出 |
| STEP2 | 計画認定 | 労働局による審査後、認定書が交付される |
| STEP3 | 雇用管理制度の整備・導入(計画期間内) | 就業規則・賃金規定等の改定・周知 |
| STEP4 | 評価期間の経過・離職率の算定 | 制度整備後の一定期間、離職状況を記録 |
| STEP5 | 支給申請 | 評価期間終了後、期限内に労働局へ提出 |
表の流れからわかるとおり、このコースは「計画→実施→評価→申請」という順序が固定されており、途中の期日や提出物を1つでも欠くと不支給の原因になります。次章から各ステップを詳しく見ていきます。
STEP1:雇用管理制度整備計画の作成と認定申請
最初に行うのが「雇用管理制度整備計画」の作成と、管轄の労働局への認定申請です。この計画には、どの雇用管理制度を、いつまでに、どのような内容で整備するのかを具体的に記載します。計画には目標とする離職率の考え方や、対象となる労働者の範囲なども盛り込む必要があり、内容が曖昧なまま提出すると差し戻しや不認定につながることがあります。
計画認定申請のタイミングで特に重要なのが「制度導入前に申請すること」です。就業規則の改定や新しい評価制度の運用をすでに始めてしまってから計画を提出しても、原則としてその制度整備は助成対象として認められません。制度を検討し始めた段階、あるいは社内で導入方針が固まった時点で、実際の運用開始前に計画認定申請の準備に着手するのが安全な進め方です。
計画の認定を受けると、労働局から認定通知が交付され、ここから計画期間がスタートします。計画期間の設定や必要書類の詳細は年度によって見直されることがあるため、申請前には必ず厚生労働省・都道府県労働局の最新の案内を確認してください。制度共通の申請書類の考え方は助成金申請に必要な書類一覧でも整理していますので参考にしてください。
STEP2:雇用管理制度の整備・導入(賃金規定等制度・諸手当等制度・人事評価制度等・職場活性化制度・健康づくり制度)
計画が認定されたら、計画期間内に実際に雇用管理制度を整備・導入します。対象となる制度は複数のカテゴリーに分かれており、事業主は自社の課題に合わせていずれかの制度を選んで整備することになります。
| 制度カテゴリー | 主な内容の例 |
|---|---|
| 賃金規定等制度 | 賃金体系・昇給ルールなどを明文化した規定の新設・整備 |
| 諸手当等制度 | 資格手当・役職手当など、新たな諸手当の制度化 |
| 人事評価制度等 | 評価基準・評価プロセスを明確化した人事評価制度の整備 |
| 職場活性化制度 | 社内表彰制度、コミュニケーション促進の仕組みなど |
| 健康づくり制度 | 健康診断の充実、メンタルヘルス対策など健康管理に関する制度 |
これらの制度は、単に規程集に条文を追加するだけでなく、就業規則の変更届の提出や労働者への周知、実際の運用実績を伴っている必要があります。たとえば人事評価制度であれば、評価シートの運用実績や評価結果のフィードバック記録が求められる場合があり、「作っただけ」で終わる制度整備は評価の際に不利になりやすい点に注意が必要です。
人事評価制度そのものの整備を軸に検討している場合は、中小企業の人事制度・評価制度整備で使える助成金も制度設計の参考になります。どの制度を選ぶべきかは、自社の離職理由や従業員アンケートの結果などを踏まえ、離職率の改善に実際につながりそうな制度を選ぶことが成果評価の面でも重要になります。
雇用環境整備(業務負担軽減機器等導入)で活用できる助成
雇用管理制度の整備とあわせて押さえておきたいのが、雇用環境整備の一環として位置づけられる「業務負担軽減機器等導入」の考え方です。これは、現場の従業員にかかる身体的・心理的な負担を軽減する設備や機器を導入することで、働きやすい職場環境をつくり、結果として職場定着につなげようとする取り組みです。
対象となりうる機器・取り組みの例としては、介護・福祉分野における移乗支援機器や、身体的負担を軽減する作業支援機器、休憩スペースの整備といったものが挙げられます。どのような機器・設備が対象になるか、また対象業種や助成の枠組みが年度によってどう扱われるかは制度改正の影響を受けやすい部分のため、機器導入を検討する場合は、雇用管理制度整備計画とあわせて労働局に相談し、対象範囲を個別に確認することを強くおすすめします。
雇用環境整備の取り組みは、単独の制度というより、雇用管理制度の整備を後押しする位置づけで語られることが多く、離職率低下という最終的な目標に向けて、制度面(ルール)とハード面(設備・機器)の両方からアプローチするというイメージで捉えておくとよいでしょう。
評価時離職率の目標達成をどう判断するか
雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの大きな特徴は、制度を整備しただけでは支給申請ができず、一定の評価期間を経て「離職率が目標どおりに低下したかどうか」を確認する必要がある点です。
具体的には、計画認定を受けた時点を基準に、計画実施前の一定期間の離職率と、制度導入後の評価期間における離職率を比較し、目標としていた水準を満たしているかどうかが審査されます。離職率の算定には、対象となる労働者の範囲や在籍期間の数え方など細かいルールがあり、離職者数・雇用保険被保険者数の記録を正確に管理しておく必要があります。
離職率の目標値や評価期間の長さといった具体的な基準は、年度ごとに見直される可能性があるため、本記事では確立していない数値を断定的には記載しません。計画認定申請の段階で、管轄の労働局から評価期間・目標水準について案内があるため、その内容を必ず書面で確認し、社内の離職状況を継続的に記録しておくことが支給申請成功の鍵になります。
※2026年9月時点の情報です。離職率の目標水準や評価期間の詳細は年度により変更されるため、最新の支給要領を厚生労働省の公式サイトで必ずご確認ください。
支給申請の手続きと必要書類
評価期間が終了し、離職率の目標が達成できたことを確認できたら、いよいよ支給申請の手続きに進みます。支給申請には期限が設けられており、評価期間終了後、一定の期間内に管轄の労働局へ申請書類一式を提出する必要があります。この期限を過ぎると、たとえ目標を達成していても支給を受けられなくなるため、評価期間の終了日をあらかじめカレンダーで管理しておくことが欠かせません。
支給申請にあたっては、一般的に次のような書類の提出が求められます。
- 支給申請書
- 雇用管理制度整備計画の認定通知書の写し
- 整備した制度の内容がわかる規程・規定類(賃金規定・評価制度の運用資料など)
- 離職率の算定根拠となる労働者名簿・雇用保険関係書類
- 支給要件を確認するための労働保険料の納付状況等に関する書類
支給額そのものについては、年度・企業規模・整備した制度の内容によって取り扱いが変わる可能性があるため、本記事では確立していない具体額の記載を避けています。支給額の詳細は、申請時点で厚生労働省・都道府県労働局が公表している最新の支給要領で必ず確認するようにしてください。
※支給額・要件は年度により見直されます。申請前には必ず厚生労働省の公式サイト、または管轄の労働局で最新の支給要領・案内をご確認ください。
申請でつまずきやすいポイントと対策
雇用管理制度・雇用環境整備助成コースは、他の助成金と比べても「計画認定の順序」「制度の実態運用」「離職率の評価」という複数のハードルがあり、途中でつまずきやすい構造になっています。特につまずきやすいポイントを整理すると次のとおりです。
| つまずきやすいポイント | 主な原因 | 対策の考え方 |
|---|---|---|
| 計画認定前に制度を導入してしまう | 就業規則改定を先行させてしまう | 制度検討段階から労働局へ事前相談し、認定申請のタイミングを確認する |
| 制度が「作っただけ」で運用実態が乏しい | 評価シートや周知記録を残していない | 運用開始時点から記録・証跡を残す仕組みを整える |
| 離職率の算定を誤る | 対象労働者の範囲・在籍期間のカウント方法を誤解 | 雇用保険被保険者台帳等をもとに、労働局の説明どおりに集計する |
| 支給申請期限を過ぎてしまう | 評価期間の終了日を把握していない | 計画認定時点で評価期間・申請期限をスケジュール化しておく |
このコースに限らず、助成金全般で不支給になりやすい理由には共通点があります。より広い視点でよくある失敗を確認したい場合は、助成金がもらえない・不支給になる理由TOP10も参考になります。
制度設計・計画作成・離職率の算定・申請書類の整備までを自社の担当者だけで進めるのは負担が大きく、特に人事労務の専門知識が十分でない場合は、書類不備や手続きの遅れにつながりがちです。自社での申請が難しいと感じた場合の考え方については、助成金は自分で申請するのは難しい?でも整理しています。社内リソースが限られる場合は、社労士や助成金コンサルなど外部の専門家に計画作成の段階から相談し、制度設計と申請書類の整合性を一緒に確認してもらうという選択肢も検討する価値があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 雇用管理制度整備計画の認定を受ける前に、社内で制度の検討を始めても問題ありませんか?
制度導入の方向性を社内で検討すること自体は問題ありませんが、就業規則の改定や新しい評価制度の実際の運用開始など、制度整備そのものを先に進めてしまうと、原則としてその部分は助成の対象外となる可能性があります。計画認定申請の前に、労働局へ事前相談しておくと安心です。
Q2. 賃金規定等制度・人事評価制度等など、複数の制度をまとめて整備することはできますか?
制度のカテゴリーや組み合わせに関する取り扱いは年度により定められているため、複数制度を同時に計画する場合は、認定申請の時点で管轄の労働局に対象範囲を確認することをおすすめします。
Q3. 業務負担軽減機器等導入だけを単独で申請することはできますか?
雇用環境整備の取り組みは、雇用管理制度の整備とあわせて検討されることが一般的です。単独での取り扱いが可能かどうかは制度の枠組みによって異なるため、機器導入を検討している場合は事前に労働局へ相談してください。
Q4. 離職率が目標どおりに下がらなかった場合、支給申請自体ができなくなりますか?
このコースは評価期間終了後の離職率が一定の目標を満たしていることが支給要件の1つとされているため、目標を達成できなかった場合は支給申請が認められない可能性があります。計画段階から離職率の傾向を分析し、実効性のある制度を選ぶことが重要です。
Q5. 支給申請の期限はいつまでですか?
支給申請には評価期間終了後の提出期限が設けられています。具体的な期限は年度・計画内容によって異なるため、計画認定時に交付される案内文書や、厚生労働省・労働局の最新情報で必ず確認してください。
まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を
雇用管理制度・雇用環境整備助成コースは、計画認定→制度導入→離職率評価→支給申請という順序を守ることが最大のポイントです。賃金規定等制度や人事評価制度等など自社に合う制度を選び、運用実態を記録に残しながら進める必要があります。制度設計や離職率の算定に不安がある場合は、早い段階で専門家に相談することが不支給リスクを減らす近道になります。
| プラン | 月額 | 申請代行手数料 | 保証 |
|---|---|---|---|
| ライト | 10,000円 | 受給額の25% | - |
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