キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者やパート・アルバイトなど非正規雇用の労働者を企業内でキャリアアップさせる取り組みを支援する制度で、正社員化コースをはじめ7つのコースに分かれています。どのコースから着手すべきかは、企業がすでに何をしているか(非正規から正社員への転換実績があるか、賃金規定は整備済みか等)によって変わります。本記事では全コースの対象・支給額の目安・向いている企業を比較し、着手優先度の判断フローまで整理します。
キャリアアップ助成金とは|制度の全体像
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の労働者を対象に、正社員化や処遇改善に取り組む事業主を支援する制度です。厚生労働省が所管し、雇用形態の多様化が進むなかで「非正規雇用から正社員へ」「待遇の底上げ」という2つの方向性を後押しすることを目的としています。
制度の特徴は、単一の助成金ではなく複数のコースから構成されている点です。企業の状況に応じて、正社員化を進めたいのか、賃金制度を整備したいのか、社会保険の適用を進めたいのかによって選ぶコースが変わります。共通の前提として、取り組みを始める前に「キャリアアップ計画」を管轄労働局に提出しておく必要があります。
各コースの解説
正社員化コース
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者を正規雇用労働者や無期雇用フルタイム労働者に転換・直接雇用した場合に支給されるコースです。非正規雇用の労働者を6ヶ月以上継続雇用した実績がある企業が対象で、転換後も一定期間の雇用継続が条件になります。支給額の目安は有期雇用から正規雇用への転換で1人あたり数十万円規模となり、最も申請件数が多い基幹コースです。非正規社員の定着率向上や採用コスト削減を狙う企業に向いています。
障害者正社員化コース
障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換した場合に支給されるコースです。正社員化コースの障害者版という位置づけで、支給額は障害の種別によって加算される仕組みになっています。障害者雇用を進めながら定着も図りたい企業に向いています。
賃金規定等改定コース
有期雇用労働者等の基本給を一定率以上増額改定した場合に支給されるコースです。正社員化を伴わず、非正規のまま処遇改善を図る点が正社員化コースとの違いです。賃金テーブルの見直しに着手できる企業、まずは待遇改善から始めたい企業に向いています。
賃金規定等共通化コース
正規雇用労働者と非正規雇用労働者で共通の賃金規定・諸手当制度を新たに設けた場合に支給されるコースです。同一労働同一賃金への対応として、正社員・非正規の待遇差を制度面から解消したい企業に向いています。
賞与・退職金制度導入コース
有期雇用労働者等を対象とする賞与または退職金制度を新たに導入し、実際に支給・積立を行った場合に支給されるコースです。非正規社員の待遇を正社員に近づけたいが、正社員化までは踏み切れない企業にとって、着手しやすいコースの一つです。
短時間労働者労働時間延長支援コース
週の所定労働時間が短い有期雇用労働者等について、労働時間を延長し、社会保険の適用を進めた場合に支給されるコースです。人手不足への対応と社会保険適用拡大の両方を後押しする狙いがあります。
社会保険適用時処遇改善コース
社会保険の適用拡大にともなって、労働者の手取り収入が減少しないよう賃上げや労働時間延長を行った事業主を支援するコースです。2024年10月以降の社会保険適用拡大に対応する企業向けに設けられた比較的新しい区分で、対応の緊急度が高い企業に向いています。
全コース比較表(対象・支給額目安・難易度・向く企業)
| コース名 | 主な対象 | 支給額の目安 | 難易度 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|---|
| 正社員化コース | 有期→正規・無期フルタイムへの転換 | 1人あたり数十万円規模 | 中 | 非正規の定着実績があり転換を進めたい企業 |
| 障害者正社員化コース | 障害者である有期雇用労働者の正社員化 | 障害種別により加算あり | 中 | 障害者雇用の定着を図りたい企業 |
| 賃金規定等改定コース | 非正規の基本給増額改定 | 増額率・人数に応じて変動 | 低〜中 | まず処遇改善から着手したい企業 |
| 賃金規定等共通化コース | 正規・非正規共通の賃金規定新設 | 制度導入時に一定額 | 中〜高 | 同一労働同一賃金対応を進めたい企業 |
| 賞与・退職金制度導入コース | 賞与・退職金制度の新設 | 制度導入時に一定額 | 中 | 正社員化せず待遇改善したい企業 |
| 短時間労働者労働時間延長支援コース | 労働時間延長+社保適用 | 延長時間・人数に応じて変動 | 中 | 人手不足対応と社保適用を両立したい企業 |
| 社会保険適用時処遇改善コース | 社保適用拡大に伴う処遇改善 | 取組内容に応じて変動 | 低〜中 | 社保適用拡大への対応が急務の企業 |
支給額は年度・企業規模・加算措置の有無によって変動するため、目安として捉えてください。正確な金額は最新の支給要領で確認する必要があります。
どのコースから着手すべきかの判断フロー
複数コースが存在するため、どこから手をつけるべきか迷う企業は少なくありません。以下のような順序で検討すると整理しやすくなります。
- 1. すでに非正規から正社員への転換実績があるか → あれば正社員化コースが第一候補
- 2. 正社員化までは踏み切れないが処遇改善はしたいか → 賃金規定等改定コース、または賞与・退職金制度導入コースを検討
- 3. 正社員・非正規の待遇差解消を制度として整えたいか → 賃金規定等共通化コースを検討
- 4. 社会保険の適用拡大対応に迫られているか → 社会保険適用時処遇改善コース、短時間労働者労働時間延長支援コースを優先
- 5. 障害者雇用を進めているか → 障害者正社員化コースを組み合わせて検討
着手優先度の判断表
| 企業の状況 | 優先すべきコース | 理由 |
|---|---|---|
| 非正規社員の定着実績がある | 正社員化コース | 支給額が大きく最も申請件数が多い基幹コース |
| 就業規則・賃金規定の整備がこれから | 賃金規定等改定コース | 比較的着手のハードルが低い |
| 社保適用拡大の対象事業所である | 社会保険適用時処遇改善コース | 対応の緊急度が高く制度の趣旨と合致 |
| 障害者雇用の定着を図りたい | 障害者正社員化コース | 正社員化コースに障害種別加算を組み合わせられる |
| 同一労働同一賃金対応が課題 | 賃金規定等共通化コース | 制度面の整備が中長期的な労務リスク低減につながる |
複数コース併用の考え方と加算措置
キャリアアップ助成金は、要件を満たせば複数コースを組み合わせて活用できます。例えば正社員化コースで転換を行いつつ、賃金規定等改定コースで基本給の増額改定も行うといった併用が可能な場合があります。また、有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する際に、あわせて賃金を一定率以上増額した場合の加算措置や、多数の労働者を同時に転換した場合の加算など、状況に応じて支給額が上乗せされる仕組みも用意されています。
ただし、コースごとに要件や対象人数の上限が異なるため、併用を検討する際は事前にキャリアアップ計画の内容を精査しておく必要があります。制度の全体像は助成金の申請窓口はどこ?労働局・ハローワーク・自治体の役割の違いも参考にしてください。
共通の前提要件と不支給になりやすい落とし穴
どのコースを選ぶ場合でも、以下の共通要件を満たしている必要があります。
- キャリアアップ計画の事前提出:取り組みを開始する前に、管轄労働局にキャリアアップ計画書を提出し、認定を受けていること
- 就業規則の整備:転換制度や賃金規定を明文化した就業規則が整っていること
- 賃金台帳・出勤簿の保管:対象労働者の労働条件や支給実績を証明できる書類を適切に保管していること
不支給になりやすい落とし穴としては、計画認定前に転換や賃金改定を実施してしまうケース、転換後すぐに離職が発生し継続雇用の要件を満たせなくなるケース、賃金台帳の記載内容と就業規則の規定が一致していないケースなどが挙げられます。特にキャリアアップ計画の提出タイミングは最も見落とされやすいポイントで、「先に転換してから計画を出す」という順序では対象外になるため注意が必要です。対象者が途中で退職した場合の扱いについては、キャリアアップ助成金の対象者が退職したら?【20で詳しく解説しています。制度全体で不支給になりやすいパターンは、助成金がもらえない・不支給になる理由TOP10【2026年版も参考になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 複数のコースを同時に申請できますか?
A. 要件を満たせば併用は可能ですが、コースごとに対象人数の上限や要件が異なるため、事前にキャリアアップ計画の内容を精査しておく必要があります。
Q2. キャリアアップ計画はいつまでに提出すればよいですか?
A. 対象となる取り組み(転換・賃金改定など)を実施する前に提出し、認定を受けている必要があります。先に取り組みを始めてしまうと対象外になるため注意してください。
Q3. パート・アルバイトから正社員への転換以外でも使えますか?
A. はい。正社員化以外にも、賃金規定の改定や賞与・退職金制度の導入など、正社員化を伴わないコースも用意されています。
Q4. 中小企業とそれ以外で支給額は変わりますか?
A. 多くのコースで中小企業とそれ以外で支給額の区分が設けられています。自社が助成金上の「中小企業」に該当するかどうかは事前に確認しておくとよいでしょう。
Q5. どのコースが自社に合うか分からない場合はどうすればよいですか?
A. 就業規則の整備状況や非正規社員の転換実績など、自社の現状を棚卸しした上で判断する必要があります。判断が難しい場合は専門家に相談する選択肢もあります。
まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を
キャリアアップ助成金は正社員化コースを中心に7つのコースで構成されており、企業の状況(転換実績・就業規則の整備状況・社保適用拡大への対応要否)によって着手すべきコースが変わります。共通してキャリアアップ計画の事前提出と就業規則の整備が前提となるため、取り組みを始める前の準備が受給の可否を分けます。複数コースの併用や加算措置も含め、自社に合った組み合わせを見極めることが重要です。
| プラン | 月額 | 申請代行手数料 | 保証 |
|---|---|---|---|
| ライト | 0円 | 受給額の25% | - |
| スタンダード(人気プラン) | 33,000円 | なし | - |
| プレミアム(イチオシ) | 55,000円 | なし | 受給額保証※ |
※プレミアムプランは年間の受給額が60万円に満たない場合、その差額を返金する「受給額保証」付き(税別・着手金0円)
- 年間平均受給額640万円/最大実績7,200万円/受給率98.8%※
- ※受給率98.8%は要件を満たしている場合の実績値
📞 03-6271-8714(受付 10:30〜20:00)
※本記事の内容は2026年8月時点の情報です。各コースの対象要件・支給額は改定される場合があるため、申請前に必ず最新の公募要領・支給要領をご確認ください。


