キャリアアップ助成金の対象者が退職したら?【2026年版】返還リスクと対策

助成金・補助金申請のイメージ 未分類

キャリアアップ助成金の対象者が途中で退職した場合、助成金の返還を求められるかどうかは「受給前の退職か、受給後の退職か」「退職の理由」によって扱いが異なります。受給前(正社員転換後の助成金支給要件期間中)に対象者が退職すると、その対象者分の助成金は原則として受給できなくなります。一方、助成金を正式に受給した後に対象者が自己都合退職した場合は、直ちに返還を求められるわけではありません。ただし、事業主都合の解雇や、書類の不備・虚偽申請が疑われる場合は返還対象になり得ます。本記事では、退職のタイミング別の扱い、返還が求められるケース・求められないケース、事前対策、代替対象者の可否について解説します。


キャリアアップ助成金の基本的な仕組みと退職の影響

キャリアアップ助成金(正社員化コースなど)は、有期雇用の契約社員・パート従業員を正社員に転換し、転換後一定期間の雇用継続と賃金の支払いが確認できた段階で助成金が支給される制度です。助成金の支給には「転換後6ヶ月分の賃金支払い実績」などの要件期間があり、この期間中に対象者が退職すると、その対象者に関する助成金は支給されません。

つまり、助成金の流れを時系列で見ると、次のようになります。

段階 内容 退職した場合の扱い
転換前 有期雇用契約で就業中 転換前の退職は助成金の対象外(そもそも転換自体が成立しない)
転換後・支給要件期間中 正社員転換後、賃金支払い実績を積み上げている期間 この期間中の退職は、原則としてその対象者分の助成金が不支給になる
支給決定後 助成金の支給が正式に決定・入金された後 退職理由により返還の要否が分かれる(次章で解説)

助成金が返還を求められるケース・求められないケース

助成金を受給した「後」に対象者が退職した場合の扱いを整理すると、以下のようになります。

退職の状況 返還を求められる可能性 理由
支給決定後に対象者が自己都合で退職した 低い(原則不要) 支給要件期間中の雇用継続・賃金支払いという要件はすでに満たされているため
支給決定前に事業主都合で解雇した 高い 事業主都合による雇用調整は、助成金の趣旨(雇用の安定)に反するとみなされる
就業規則等に定めのない解雇を行った 高い 助成金の支給要件そのものを満たさなくなる可能性がある
転換の要件を満たしていないことが後から判明した 高い 書類不備・要件不備は返還対象になりやすい
助成金申請に際して虚偽の記載があった 非常に高い(不正受給として扱われる可能性) 不正受給が確認されると、返還に加えて加算金の対象になることもある

支給決定後の自己都合退職については、すでに支給要件(転換後の雇用継続実績・賃金支払い実績)を満たした上での支給であるため、原則として返還を求められることはありません。一方で、事業主側の都合による解雇や、そもそもの申請内容に不備・虚偽があった場合は、支給決定前後を問わず返還や不支給の対象になり得ます。

なお、同一事業所で一定期間内に会社都合による解雇(退職勧奨を含む)が一定数以上発生している場合、そもそもキャリアアップ助成金自体の申請ができなくなる「支給要件の欠格事由」に該当することもあるため、事業主都合の離職を発生させないことが助成金活用の大前提になります。


退職リスクを減らすための事前対策

対象者の退職による助成金の不支給・返還リスクを減らすためには、転換前後の段階で以下のような対策を行うことが有効です。

転換前:適性を見極める期間を設ける

正社員転換の対象とする前に、契約社員・パートとしての就業期間で本人の就業意欲や適性を十分に見極めます。転換直後の早期離職は、支給要件期間中の不支給リスクに直結します。

転換時:本人の意向とキャリアプランをすり合わせる

正社員転換は従業員にとってもメリットの大きい制度ですが、本人が正社員としての働き方(勤務時間・責任範囲の変化など)を望んでいるかを事前にすり合わせておくことで、転換後のミスマッチによる早期離職を防ぎやすくなります。

転換後:定着支援・フォロー面談を実施する

転換後の支給要件期間中は、定期的な面談やフォローアップを行い、早期に不満や離職の兆候を把握できる体制を整えます。人材確保等支援助成金など、定着支援に関連する助成金と組み合わせて制度設計をする企業もあります。

書類・記録を整備しておく

就業規則、キャリアアップ計画書、賃金台帳、出勤簿などの書類を正確に整備し、転換の実態と申請内容に齟齬がない状態を保つことが、返還リスクを避ける上で基本となります。


対象者が退職した場合、代替の対象者を立てられるか

キャリアアップ助成金の支給要件期間中に対象者が退職した場合、その対象者について助成金を受給することはできませんが、別の従業員を新たに正社員転換の対象とすることは可能です。

状況 対応の可否
退職した対象者の代わりに、別の有期雇用従業員を正社員転換する 可能(新たな対象者として、あらためて転換・支給要件期間の管理が必要)
退職した対象者の枠を「引き継ぐ」形で処理する 不可(対象者ごとに個別に要件期間を満たす必要があり、引き継ぎという概念はない)
同一年度内に複数名を正社員転換する 可能(人数分、個別に申請・管理を行う)

代替対象者を立てる場合も、あらためてキャリアアップ計画書への記載や、転換後の支給要件期間の管理が必要になります。退職者が出たことで焦って手続きを進めるのではなく、次の対象者についても転換前の見極め期間を確保することが望ましいです。


よくある質問(FAQ)

Q1. 正社員転換後、支給決定前に対象者が退職したら助成金はどうなりますか?

A. 原則として、その対象者に関する助成金は支給されません。支給要件期間中の雇用継続が受給の前提となっているためです。

Q2. 助成金を受け取った後に対象者が自己都合退職した場合、返還は必要ですか?

A. 支給決定時点で要件(転換後の雇用継続・賃金支払い実績)をすでに満たしているため、原則として返還は求められません。ただし個別の事情によって扱いが異なる場合があるため、不明な点は労働局やハローワークに確認することをおすすめします。

Q3. 会社都合で対象者を解雇した場合はどうなりますか?

A. 事業主都合による解雇は、助成金の趣旨(雇用の安定)に反するとみなされ、不支給や返還の対象になる可能性が高くなります。また、一定期間内の会社都合離職者数によっては、助成金自体の申請要件を満たせなくなることもあります。

Q4. 退職した対象者の代わりに別の従業員を正社員転換できますか?

A. 可能です。ただし新たな対象者として、あらためてキャリアアップ計画への記載や支給要件期間の管理を行う必要があります。

Q5. 退職リスクを見越して事前にできる対策はありますか?

A. 転換前の見極め期間の確保、本人の意向確認、転換後の定着支援面談、書類の正確な整備が有効な対策です。制度全体の設計や書類整備に不安がある場合は、社会保険労務士や助成金コンサルへの相談も選択肢になります。


まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を

キャリアアップ助成金は、支給要件期間中の退職では原則不支給、支給決定後の自己都合退職では原則返還不要ですが、事業主都合の解雇や書類不備は返還リスクにつながります。退職リスクを減らすには、転換前の見極めと転換後の定着支援が有効です。

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