キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」の申請方法【2026年版】|賃上げで受給する要件と手順

キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」の申請方法【2026年版】 雇用・採用助成金

キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」は、非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の基本給を引き上げる賃金規定等を新たに作成・実施した事業主に支給される制度です。結論として、対象になるのは「有期雇用労働者等の基本給の賃金規定(賃金テーブル)を一定率以上引き上げ、実際に増額した賃金を支払った」中小企業・大企業で、賃上げ幅と対象人数に応じて支給額が決まります。制度の骨格自体は例年大きく変わりませんが、賃上げ率の区分や支給額は年度改定の対象になりやすいため、本記事では申請の流れを中心に整理し、金額面は必ず最新の支給要領で確認することを前提に解説します。

賃金規定等改定コースとは|対象となる労働者と引き上げ方法

賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等(有期契約労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)を対象に、次のいずれかの方法で基本給を増額改定した場合に支給対象となります。

  • 全体的な賃金規定等改定:事業所内の有期雇用労働者等全体に適用される賃金規定等を増額改定する
  • 職務評価による賃金規定等改定:職務の内容を評価する手法(職務評価)を用いて、賃金規定等を増額改定する

いずれの場合も、改定前後の賃金規定を比較して、対象労働者の基本給(時給・日給・月給)が一定率以上増額されている必要があります。単発の昇給や一時金の支給では対象にならず、あくまで「賃金規定等」という就業規則・給与規程レベルでの改定が必要な点がポイントです。

対象労働者になり得るのは、支給申請日の前日から起算して過去6ヶ月以上(制度によって異なる)雇用されている有期雇用労働者等で、改定後の賃金が最低賃金を一定以上上回っていることなどが条件になります。すでに正社員と同等の待遇にある労働者や、役員・事業主と特別な関係にある労働者などは対象外です。

支給要件|賃上げ率の区分と対象人数の考え方

支給額は、基本給の増額改定率によって区分が分かれ、対象人数が多いほど総支給額も増える仕組みです。増額改定率の区分は年度によって細かく変わることがありますが、おおむね「3%以上5%未満」「5%以上」といった段階で支給額が変わる設計が続いています。

以下は制度の考え方を整理した表です。実際の区分・金額は必ず当該年度の支給要領を確認してください。

増額改定率の区分(イメージ) 支給の考え方 備考
3%以上5%未満 対象労働者1人あたりに一定額を支給(低い区分) 生産性要件等の加算がある年度もある
5%以上 対象労働者1人あたりに一定額を支給(高い区分) 中小企業の方が支給額が手厚い設計が一般的

また、1事業所あたりの支給申請回数や対象人数には上限が設けられており、年度によって「1年度1事業所あたり◯人まで」といった制限があります。多くの非正規雇用労働者を抱える事業所ほど計画的な申請が重要になります。

支給額の目安と対象経費の考え方

賃金規定等改定コースは、他の助成金のように経費の実費補助ではなく、賃上げ改定率の区分と対象人数に応じた定額支給が基本です。中小企業と大企業で支給額に差があり、中小企業の方が優遇されています。

事業規模 支給の目安(2025年度時点の水準) 対象人数の考え方
中小企業 1人あたり数万円〜十数万円程度(増額改定率によって変動) 1事業所あたり一定人数まで申請可能
大企業 中小企業より低い水準で設定されるのが一般的 同上

賃上げ額そのものが大きいほど支給額も高くなる設計のため、最低賃金の引き上げに合わせて賃金規定を改定するタイミングと本制度の活用時期を合わせると効率的です。ただし最低賃金の引き上げ分のみでは増額改定率の要件を満たさないケースもあるため、事前のシミュレーションが欠かせません。

申請の流れ|キャリアアップ計画書の提出から支給申請まで

キャリアアップ助成金は、賃金規定等改定コースに限らず、事前に「キャリアアップ計画書」を提出しておく必要があります。時系列で整理すると以下の流れになります。

ステップ 時期の目安 やること 提出先
STEP1 キャリアアップ計画の作成・提出 賃金規定改定の取り組み開始前 キャリアアップ計画書を作成し、管轄の労働局・ハローワークへ提出 都道府県労働局
STEP2 賃金規定等の改定 計画提出後、取り組み実施期間内 就業規則・給与規程を改定し、労働基準監督署へ届出(常時10人以上の事業場) 社内・労働基準監督署
STEP3 賃金の増額支払い 改定後、最低6ヶ月分(区分により異なる) 改定後の賃金規定に基づき実際に増額した賃金を支払う 社内
STEP4 支給申請 賃金支払い期間終了後、2ヶ月以内が目安 支給申請書・賃金台帳・出勤簿・改定前後の規程等を提出 都道府県労働局
STEP5 審査・支給決定・入金 支給申請後、数ヶ月程度 労働局による書類審査を経て支給決定、入金

支給申請には期限が設けられており、賃金の増額支払いが確認できる期間の満了日の翌日から起算して2ヶ月以内といった形で定められています。この期限を過ぎると申請自体が受理されなくなるため、社内のスケジュール管理が極めて重要です。

必要書類と審査で見られるポイント

賃金規定等改定コースの支給申請では、以下のような書類の提出が求められます。

  • キャリアアップ計画書(事前提出済みのもの)
  • 改定前・改定後の就業規則、賃金規定、給与規程
  • 労働基準監督署への届出が確認できる書類(受付印付きの控え等、常時10人以上の事業場)
  • 対象労働者の賃金台帳・出勤簿(改定前後の賃金額が確認できるもの)
  • 対象労働者の雇用契約書または労働条件通知書
  • 対象労働者の実態が確認できる資料(就業状況等)

審査では、単に賃金規定の数字を書き換えただけでなく、実態として基本給が増額され、対象労働者に確実に支払われているかが確認されます。賃金台帳と雇用契約書の記載内容に矛盾があると、審査に時間がかかったり、不支給の原因になったりすることがあるため、日頃から書類の整合性を保っておくことが重要です。

職務評価による賃金規定等改定を選ぶメリット・デメリット

賃金規定等改定コースには、「全体的な賃金規定等改定」と「職務評価による賃金規定等改定」という2つのアプローチがあります。職務評価とは、職務の難易度・責任の重さ・必要なスキルなどを整理し、それに基づいて賃金水準を設計する手法です。

職務評価を用いるメリットは、賃金の決め方に客観的な根拠を持たせられる点です。非正規雇用労働者から「なぜこの時給なのか」と問われた際に、業務内容や役割に基づいた説明ができるようになり、結果として従業員の納得感やエンゲージメントの向上にもつながりやすくなります。一方でデメリットとして、職務評価の実施には一定の時間と手間がかかり、評価基準の設計を誤ると社内の他の制度(等級制度や正社員の賃金体系)との整合性が取れなくなるリスクがあります。

単純に基本給を一律で引き上げるだけであれば「全体的な賃金規定等改定」の方が手続きは簡潔です。将来的に正社員登用や同一労働同一賃金への対応も見据えているのであれば、時間をかけてでも職務評価による改定を選ぶ価値があります。自社の人事制度の将来像に応じて、どちらのアプローチを取るか検討するとよいでしょう。

同一労働同一賃金との関係

賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の処遇改善を後押しする制度である点で、パートタイム・有期雇用労働法が求める「同一労働同一賃金」の考え方とも密接に関わります。正社員と職務内容が近い非正規雇用労働者がいる場合、基本給の差が不合理でないかを見直すきっかけとして本コースを活用する企業も増えています。賃金規定の改定にあたっては、単に助成金の要件を満たすことだけを目的にするのではなく、自社の処遇制度全体を点検する機会として位置づけると、労務リスクの低減にもつながります。

FAQ|賃金規定等改定コースのよくある質問

Q1. 最低賃金の引き上げに対応しただけでも対象になりますか。

A. 最低賃金の改定に伴う賃上げであっても、基本給の増額改定率が要件を満たしていれば対象になり得ます。ただし最低賃金引き上げ分だけでは要件率に届かないケースもあるため、事前に増額幅を試算しておくことをおすすめします。

Q2. 対象労働者が支給申請前に退職してしまった場合はどうなりますか。

A. 賃金の増額支払い期間中に対象労働者が退職すると、その労働者については支給対象外となる、あるいは要件を満たせなくなる可能性があります。退職リスクを考慮した対象者選定や、複数人での申請を検討すると安定しやすくなります。

Q3. 正社員化コースなど他のコースと同時に活用できますか。

A. キャリアアップ助成金には正社員化コースや賞与・退職金制度導入コースなど複数のコースがあり、要件を満たせば併用が可能な組み合わせもあります。ただし対象労働者や取り組み内容が重複する場合は個別の確認が必要です。

Q4. 支給申請の期限を過ぎてしまいそうな場合、延長はできますか。

A. 原則として支給申請期限の延長は認められにくく、期限を過ぎると不支給となるリスクが高い制度です。賃金支払いが完了した時点から逆算して、早めに書類準備を進めることが重要です。

Q5. 就業規則の届出をしていない小規模事業場でも申請できますか。

A. 常時10人未満の事業場では就業規則の届出義務自体がありませんが、賃金規定の内容を明文化し、労働者へ周知していることを示す資料は必要になります。届出がなくても対象になり得ますが、規程の整備は必須です。

まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を

賃金規定等改定コースは、非正規雇用労働者の基本給を増額改定し、実際に賃上げを実施した事業主を支援する制度です。増額改定率の区分判定や支給申請期限の管理、賃金台帳との整合性チェックなど、実務上の注意点が多い助成金でもあります。自社での判断に不安がある場合は、専門家のサポートを受けながら進めるのも一つの方法です。

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