賞与や退職金の制度がない会社でも助成金は受給できる?【2026年版】|キャリアアップ助成金の要件を確認

賞与や退職金の制度がない会社でも助成金は受給できる?【2026年版】 雇用・採用助成金

結論として、賞与や退職金の制度がなくても、助成金を受給できる可能性は十分にある。助成金の多くは賞与・退職金の有無そのものを受給の条件にしていない。ただしキャリアアップ助成金には、賞与や退職金の制度を「新しく導入すること」を支給の対象にするコースがあり、逆に制度の有無が関わってくる場面もある。つまり制度がないことは「対象外の理由」というより、「これから制度をつくれば助成金の対象になり得る出発点」と捉える方が実態に近い。この記事では、賞与・退職金制度がない会社が確認すべきポイントを整理する。

結論:賞与・退職金制度がなくても対象になる助成金は多い

助成金の受給要件は制度ごとに定められており、「賞与制度があること」「退職金制度があること」を一律の前提としているわけではない。雇用保険の適用事業所であること、労働関係法令を守っていること、就業規則や雇用契約書が整備されていること、といった共通の土台の方が重視される。

そのうえで、賞与・退職金との関係は次の3つのパターンに分けて考えると分かりやすい。

パターン 賞与・退職金との関係 具体的な考え方
制度の有無を問わない助成金 関係しない 多くの雇用関連助成金は、賞与・退職金の有無は問われない
制度を新しくつくると対象になる助成金 導入自体が支給の対象 キャリアアップ助成金の該当コースなど。制度を就業規則に規定し、適用する必要がある
制度の有無が要件や加算に関わる助成金 要件・加算の判断材料 正社員化などの場面で、賞与・退職金の扱いが確認される場合がある

このうち2番目と3番目は年度ごとに要件が変更されることがあり、金額や細かい条件は最新の支給要領で確認する必要がある。ここでは金額を断定せず、考え方の整理にとどめる。

キャリアアップ助成金とは:賞与・退職金制度との関係

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の労働者の処遇改善や正社員化に取り組む事業主を支援する制度である。コースは複数あり、代表的なものとして次のような分類がある。

  • 正社員化コース:有期雇用労働者などを正規雇用に転換・直接雇用した場合に対象となる
  • 賃金規定等改定コース:非正規雇用労働者の基本給の賃金規定等を増額改定した場合に対象となる
  • 賞与・退職金制度導入コース:非正規雇用労働者を対象に、賞与や退職金制度を就業規則等に規定し、実際に適用した場合に対象となる
  • その他のコース:社会保険適用時の処遇改善、短時間労働者の労働時間延長など

コースの名称や区分、支給額は年度で見直される。とくに賞与・退職金に関わるコースは、対象となる労働者の範囲や、制度の設計要件(支給時期・算定方法の明記など)が細かく定められているため、必ず最新の支給要領を確認したい。全コースの比較は、キャリアアップ助成金の全コース比較【2026年版】|正社員化・賃金規定改定・賞与退職金導入の使い分けでも整理している。

制度がない会社が「賞与・退職金制度導入」を助成金の入り口にする考え方

すでに賞与・退職金制度がある会社は、その制度を非正規雇用の労働者にも適用しているか、という視点になる。一方、制度がまったくない会社は、新しく制度を設ける必要がある反面、その導入自体が助成金の対象になり得る。

制度導入コースで一般的に求められる流れは、次のとおりである。

  1. 1. 計画を立てる:対象となる非正規雇用の労働者を決め、賞与または退職金の設計方針を整理する
  2. 2. 就業規則を整える:賞与・退職金の支給対象、支給時期、算定方法などを就業規則等に明記する
  3. 3. 労働局へ必要な届出をする:制度によって、事前に計画の届出が求められる場合がある
  4. 4. 実際に制度を適用する:規定しただけでは足りず、対象労働者に実際に賞与や退職金を支給・積立するなどして運用する
  5. 5. 支給申請をする:運用開始後、定められた期間内に必要書類をそろえて申請する

ここで見落とされやすいのが、「制度を作ったが、実際には運用していない」ケースである。規定が形だけで実態がない場合、審査で不支給と判断されるリスクがある。制度の導入は、会社の人件費計画に組み込める内容でなければ、助成金をもらって終わりではなく、その後の負担を抱えることにもなる。就業規則の改定と助成金の関係は、助成金の「就業規則」作成・改定が受給の鍵!2026年版完全ガイド|助成金に必要な就業規則の要件と整備の手順で詳しく解説している。

正社員化コースで賞与・退職金がない場合はどうなるか

正社員化コースは、有期雇用労働者などを正社員に転換したときに対象となる、キャリアアップ助成金の中でも利用の多いコースである。ここで賞与・退職金の有無がどう扱われるかは、社労士や労働局に確認される代表的なポイントのひとつである。

一般的な考え方としては、次のとおりである。

  • 転換後の正社員に適用される就業規則や賃金規定がきちんと整備されていることが前提になる
  • 転換前後で賃金が一定割合以上増えているか、という比較で賞与が含まれる形で計算される場合がある
  • 賞与や退職金の制度が正社員向けに定められているかどうかが、書類確認で見られることがある

これらは制度の細かな運用や年度の改正によって扱いが変わりうる部分であり、賞与や退職金がまったくない会社が正社員化コースを使えないと断定することはできない。逆に、賞与や退職金を含む正社員の処遇が就業規則に明記されている会社の方が、書類が整理されていて審査を通りやすい傾向がある。正社員化コースの流れは、キャリアアップ助成金「正社員化コース」の申請方法【2026年版】|転換前後の要件と手続きの流れに詳しい。

賃金規定等改定コースとの組み合わせという選択肢

賞与や退職金の制度を新設するほどの余力がない会社でも、非正規雇用の労働者の基本給の賃金規定を増額改定することで、助成金の対象になるケースがある。この場合は賞与・退職金制度とは別のコースとして扱われ、賃金テーブルの見直しと就業規則への反映が中心になる。こちらの詳細は、キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」の申請方法【2026年版】|賃上げで受給する要件と手順にまとめている。

どのコースを選ぶかは、会社の人員構成と資金計画によって変わる。次の観点で比べると判断しやすい。

検討する観点 賞与・退職金制度導入 賃金規定等改定 正社員化
主な取り組み 制度を新設・適用する 賃金テーブルを増額改定する 非正規から正社員へ転換する
会社の負担が続く度合い 制度を続ける限り継続 増額した賃金が継続 正社員の処遇が継続
準備の中心 就業規則の規定と運用 賃金規定と対象者の整理 転換制度の整備と手続き
向いている会社 定着率を上げたい会社 最低賃金の引き上げに備えたい会社 人材の長期雇用を目指す会社

助成金の額だけでなく、その後の人件費の負担が会社にとって無理のない範囲かどうかを確認することが大切である。

賞与・退職金がない会社がつまずきやすい注意点

制度をこれから整える会社で、実際によくある失敗を挙げる。

  • 就業規則の規定が抽象的:「賞与は業績に応じて支給することがある」だけでは、対象者や算定方法が不明で要件を満たさない可能性がある
  • 導入時期のずれ:制度を就業規則に規定するタイミングと、労働局への届出や計画の提出のタイミングがずれると、対象外になることがある
  • 賞与が実質的に支給されていない:規定だけで実際の支給・運用がない場合、審査で問題になる
  • 対象労働者の範囲が曖昧:どの雇用区分に適用するのかが就業規則や雇用契約書から読み取れない

こうした失敗は、制度の趣旨を理解しないまま申請を進めた場合に起こりやすい。判断に迷う場合は、社会保険労務士など専門家に事前に確認しておくと、無駄な手戻りを防げる。

専門家に相談するタイミング

賞与・退職金制度の導入は、助成金の対象になる一方で、会社の人件費の構造を変える判断でもある。次のような場合は、申請の前に専門家へ相談しておくと安心である。

  • 制度をつくる前に、どのコースが最も自社に合うか整理したい
  • 就業規則の改定と労働局への手続きの順番が分からない
  • 助成金の対象となる労働者の人数や、想定される受給額を把握したい

専門家に依頼する場合の費用や依頼のしかたは、助成金の代行費用相場|社労士・コンサルに依頼する場合の料金体系を徹底比較【2026年版】が参考になる。

よくある質問(FAQ)

Q1. 賞与も退職金もない会社は、キャリアアップ助成金をまったく使えませんか?

A. そうとは限らない。制度がない状態から新しく導入すること自体を対象にするコースがあり、また賞与・退職金と関係のないコースもある。ただし年度ごとに要件が改正されるため、最新の支給要領で確認する必要がある。

Q2. 賞与制度を就業規則に書くだけで助成金の対象になりますか?

A. 規定するだけでは足りないのが一般的である。実際に対象の労働者に適用し、運用した実績が求められることが多い。

Q3. 賞与・退職金制度を導入するとどのくらいの支給額になりますか?

A. 支給額はコースや企業規模、対象人数によって異なり、年度で見直されることもある。この記事では金額を断定せず、最新の支給要領での確認をおすすめする。

Q4. 従業員が数人の小規模な会社でも申請できますか?

A. 対象となる労働者が要件を満たしていれば、会社の規模にかかわらず申請できる制度が多い。ただし、就業規則の作成義務や届出の有無などは事業所の状況によって異なる。

まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を

賞与や退職金の制度がなくても、助成金を受給できる可能性は十分にあり、制度がない状態は新規導入型のコースを活用するきっかけにもなる。重要なのは、制度を形だけで終わらせず、就業規則の規定と実際の運用をそろえることである。自社にどのコースが合うか整理したい場合は、専門家に相談するのも一つの方法だ。

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