両立支援等助成金「育児休業等支援コース」は、育児休業の取得や職場復帰を円滑に進めるための取り組みを行った中小企業事業主に支給される制度です。結論として、対象になるのは「育休復帰支援プラン」を作成し、そのプランに沿って対象労働者の育児休業取得・職場復帰を実際に支援した中小企業で、育休取得時と復帰時それぞれで助成が受けられる設計になっています。従業員数の少ない中小企業ほど、育休中の代替要員の確保や業務引き継ぎの負担が大きくなりがちですが、本コースはそうした負担を軽減する目的で設計されています。支給額や細かい要件は年度改定の対象になりやすいため、本記事では手続きの流れを中心に解説し、金額面は必ず最新のパンフレットで確認することを前提にお読みください。
育児休業等支援コースとは|対象となる取り組みの全体像
育児休業等支援コースは、大きく分けて「育休取得時」と「職場復帰時」の2つの場面で助成が行われる仕組みです(年度によって呼称や区分の細部は変わることがあります)。
- 育休取得時:対象労働者が育児休業を取得する前に、業務の引き継ぎや復帰後の働き方について上司・人事担当者と面談を行い、育休復帰支援プランを作成したうえで、実際に育児休業を取得させた場合に助成
- 職場復帰時:育休復帰支援プランに基づき、復帰前・復帰後に面談を実施し、原職または原職相当職に復帰させ、一定期間継続して雇用した場合に助成
いずれの場面でも「育休復帰支援プラン」の作成が前提条件になります。プランには、休業中の業務の引き継ぎ方法、復帰後の働き方に関する希望のヒアリング、復帰前後の面談スケジュールなどを盛り込む必要があります。単に育児休業を取得させただけでは対象にならず、計画的な支援体制を整えていることが審査のポイントになります。
対象となる中小企業事業主は、育児・介護休業法に規定する育児休業の対象となる労働者を雇用しており、育休復帰支援プランに基づく取り組みを実施した事業主です。有期雇用労働者・パートタイム労働者も要件を満たせば対象に含まれる場合があります。
支給要件|育休復帰支援プランの作成と実施のポイント
支給を受けるためには、以下のような要件を満たす必要があります(年度により細部は変動します)。
- 育休復帰支援プランを、対象労働者ごとに作成していること
- プランに基づき、育休取得前・復帰前後に上司または人事担当者による面談を実施していること
- 対象労働者が原職または原職相当職に復帰し、復帰後一定期間(6ヶ月程度が目安)継続して雇用されていること
- 育児・介護休業法に定める諸制度を就業規則等に規定していること
- 労働保険料の滞納がないこと、直近で解雇等を行っていないことなど、他の助成金と共通する不支給要件に該当しないこと
特に重要なのが「原職または原職相当職への復帰」です。復帰後に大幅に異なる職務内容・処遇に変更してしまうと、原職相当と認められず支給対象外になる可能性があります。復帰後のポジションや処遇については、休業前の段階から本人と丁寧にすり合わせておくことが望まれます。
支給額の目安|育休取得時と職場復帰時の助成
支給額は「育休取得時」「職場復帰時」それぞれで設定されており、対象労働者1人あたりの定額支給が基本です。中小企業向けの水準は比較的手厚く設計されているのが特徴です。
| 助成の場面 | 支給額の目安(2025年度時点の水準) | 主な要件 |
|---|---|---|
| 育休取得時 | 1人あたり数十万円程度 | 育休復帰支援プランの作成・実施、育休取得(一定期間以上) |
| 職場復帰時 | 1人あたり数十万円程度 | 原職相当職への復帰、復帰後一定期間の継続雇用 |
| 業務代替支援(制度がある場合) | 代替要員の確保状況に応じて加算 | 代替要員の新規雇用や手当支給など |
男性労働者の育休取得を促進する加算措置や、育休期間中の業務代替体制を整えた場合の加算措置が設けられている年度もあります。自社の状況によって活用できる加算がないか、最新の制度概要で確認することをおすすめします。
申請の流れ|プラン作成から支給申請までのステップ
育児休業等支援コースは、育休取得時と職場復帰時でそれぞれ支給申請のタイミングが分かれます。全体の流れを時系列で整理すると以下の通りです。
| ステップ | 時期の目安 | やること | 提出先 |
|---|---|---|---|
| STEP1 育休復帰支援プランの作成 | 対象労働者の育休取得前 | 対象労働者との面談、業務引き継ぎ計画、復帰後の働き方の確認 | 社内 |
| STEP2 育児休業の取得 | プラン作成後 | プランに沿って対象労働者が育児休業を取得(一定期間以上) | 社内 |
| STEP3 育休取得時の支給申請 | 育休開始から一定期間経過後 | 支給申請書・育休復帰支援プラン・休業取得の証拠書類を提出 | 都道府県労働局 |
| STEP4 復帰前後の面談・職場復帰 | 育休終了前後 | 復帰前面談を実施し、原職相当職への復帰を確認 | 社内 |
| STEP5 復帰後の継続雇用 | 復帰後一定期間(目安6ヶ月) | 復帰後も継続して雇用し、勤務実態を記録 | 社内 |
| STEP6 職場復帰時の支給申請 | 継続雇用期間経過後 | 支給申請書・復帰後の勤務状況が確認できる書類を提出 | 都道府県労働局 |
育休取得時と職場復帰時で申請のタイミングが分かれるため、社内でスケジュール管理を徹底しないと、申請期限を過ぎてしまうリスクがあります。人事労務担当者は、対象労働者ごとに育休開始日・復帰予定日・申請期限をあらかじめ一覧化しておくと安心です。
必要書類と実務上の注意点
育児休業等支援コースの支給申請では、主に以下の書類が求められます。
- 育休復帰支援プラン(対象労働者ごとに作成したもの)
- 面談記録(育休取得前・復帰前後の面談内容がわかるもの)
- 育児休業取得を確認できる書類(育児休業申出書、辞令等)
- 賃金台帳・出勤簿(休業期間・復帰後の勤務状況が確認できるもの)
- 就業規則(育児・介護休業に関する規定を含むもの)
- 復帰後のポジション・処遇が原職相当であることを確認できる資料
実務上よくあるつまずきポイントは「面談記録の不備」と「復帰後の職務内容の変更」です。面談を実施していても記録を残していないと、審査の際に取り組みの実施が証明できず不支給になることがあります。また、復帰後に本人の希望を踏まえずに職務内容を大きく変えてしまうと、原職相当と認められないリスクがあるため、事前のすり合わせが重要です。
男性労働者の育休取得と加算措置の考え方
近年、男性労働者の育児休業取得を促進する観点から、両立支援等助成金の育児休業等支援コースでは、男性労働者が一定期間以上の育児休業を取得した場合に加算措置が設けられる年度があります。中小企業では「男性が育休を取ると業務が回らなくなる」という懸念から取得をためらうケースも少なくありませんが、育休復帰支援プランの中で業務の引き継ぎ方法や代替体制をあらかじめ整理しておくことで、こうした懸念を軽減しながら制度を活用できます。
男性労働者の育休取得は、従業員満足度や採用力の向上にもつながる取り組みとして注目されており、くるみん認定など次世代育成支援対策推進法に基づく認定制度と合わせて活用する企業も増えています。育児休業等支援コースの活用を、単なる助成金の受給にとどめず、自社の働きやすさをアピールする材料として位置づけることで、採用市場における競争力の強化にもつなげられます。
中小企業が陥りやすい落とし穴
育児休業等支援コースの申請でよくあるつまずきは、「育休取得の相談を受けてからプラン作成に着手する」タイミングの遅れです。育休復帰支援プランは育児休業の取得前に作成しておく必要があるため、対象労働者から妊娠・出産の報告を受けた段階で、早めに人事担当者が動き出す体制を整えておくことが望まれます。また、中小企業では人事労務の専任担当者がいないケースも多く、面談記録の作成や書類の保管が後回しになりがちです。育休復帰支援プランのひな形や面談記録シートをあらかじめ用意しておき、対象者が発生するたびにルーティンとして運用できる体制を整えることが、申請の成功率を高める近道になります。
FAQ|育児休業等支援コースのよくある質問
Q1. 有期雇用労働者やパートタイム労働者も対象になりますか。
A. 育児・介護休業法の育児休業の対象となる労働者であり、他の要件を満たせば有期雇用労働者やパートタイム労働者も対象に含まれる場合があります。雇用形態だけで一律に対象外とはならないため、個別に要件を確認することをおすすめします。
Q2. 育休復帰支援プランは育休取得後に作成しても間に合いますか。
A. 育休復帰支援プランは原則として育児休業の取得前に作成しておく必要があります。取得後に作成した場合は要件を満たさず対象外となる可能性が高いため、育休の相談を受けた時点でプラン作成に着手することが重要です。
Q3. 育休中に代替要員を雇用しなかった場合でも申請できますか。
A. 育休取得時・職場復帰時の基本部分は代替要員の確保がなくても対象になり得ますが、業務代替に関する加算措置を利用する場合は代替要員の確保状況が要件になります。加算を狙うかどうかで準備すべき内容が変わります。
Q4. 復帰後すぐに退職してしまった場合はどうなりますか。
A. 職場復帰時の支給には、復帰後一定期間の継続雇用が要件となっているため、その期間内に退職すると職場復帰時の助成は受けられない可能性が高くなります。育休取得時の助成については別途要件を確認する必要があります。
まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を
育児休業等支援コースは、育休復帰支援プランの作成と、育休取得時・職場復帰時それぞれの取り組みを通じて助成が受けられる制度です。面談記録の整備や原職相当職への復帰といった実務上の細かいポイントを押さえないと、不支給につながるリスクもあります。自社だけでの対応に不安がある場合は、専門家に相談しながら進める方法もあります。
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