結論から言うと、このコースは3歳から小学校就学前の子を養育する労働者向けに、フレックスタイムやテレワークなど複数の柔軟な働き方に関する制度を導入し、就業規則に定めたうえで対象労働者に実際に利用させることで支給される助成金である。申請の流れは大きく「制度の整備・就業規則への規定」「多様な働き方支援プランの策定」「制度の周知・利用」「支給申請」の4段階に分かれる。以下で対象要件から手順、注意点までを順に解説する。
両立支援等助成金「柔軟な働き方選択制度等支援コース」とは
両立支援等助成金は、仕事と育児・介護の両立を支援する取り組みを行った中小企業事業主等を対象に、厚生労働省が実施している助成金制度である。そのなかでも「柔軟な働き方選択制度等支援コース」は、小学校就学前の子を養育する労働者が、育児をしながらでも柔軟に働き続けられるよう、複数の制度を組み合わせて導入した事業主を支援する仕組みになっている。
対象となるのは、3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者である。育児休業からの復帰後、時短勤務だけでは対応しきれない働き方のニーズに応えるため、フレックスタイム制度や時差出勤制度、テレワークといった選択肢を用意することが求められる。単に制度を就業規則に書くだけでなく、対象労働者が実際にその制度を利用した実績があって初めて支給対象になる点が重要である。
対象となる制度の種類と柔軟な働き方支援プランの作り方
このコースで導入が想定されている制度には、主に次のようなものがある。
- フレックスタイム制度(コアタイムを設けない、または短く設定するものを含む)
- 時差出勤制度(始業・終業時刻を早める、または遅らせる制度)
- テレワーク等(在宅勤務やサテライトオフィス勤務など)
- 短時間勤務制度(法定の時短勤務よりも対象年齢や適用期間を拡充したもの)
- 保育サービスを手配し、その費用の一部または全部を事業主が負担する制度
- 子の養育を容易にするための休暇を付与する制度(法定の看護休暇を上回る内容であることが必要)
事業主はこれらの制度から複数を選んで就業規則等に規定し、あわせて「柔軟な働き方支援プラン」を作成する必要がある。プランには、対象労働者ごとに利用可能な制度の内容や利用期間、労働者本人の意向確認の方法などを具体的に記載することが求められる。プランの作成にあたっては、対象労働者との面談を実施し、希望する働き方を丁寧にヒアリングしたうえで反映させることが重要になる。
制度導入時に整えておきたい規程類
| 整備する規程・書類 | 記載しておきたい主な内容 |
|---|---|
| 就業規則(育児・介護休業規程) | 各制度の対象者範囲、利用期間、申出手続き |
| 柔軟な働き方支援プラン | 対象労働者ごとの利用制度、面談記録、意向確認の方法 |
| 制度利用申出書・許可書 | 利用開始日、利用する制度の種類、承認者の記録 |
| 周知用資料 | 社内掲示・イントラネット等での制度周知の記録 |
制度数に応じた支給額の考え方
このコースの支給額は、導入して労働者に実際に利用させた制度の数や、対象労働者の人数に応じて変動する仕組みになっている。制度を複数組み合わせて用意し、対象労働者が利用する制度の幅が広いほど、支給される区分が上がっていくという設計である。もっとも、支給額の具体的な金額や制度数ごとの区分は年度ごとに見直される可能性があるため、本記事では確実な数字のみを示すにとどめ、具体額の断定は避けている。
支給申請を検討する段階では、必ず厚生労働省の最新の支給要領・パンフレットで金額や上限、加算の条件を確認してほしい。※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しており、最新の支給要領・公募要領は厚生労働省の公式サイトで必ずご確認いただきたい。
申請の流れ|制度導入から支給申請までの手順
実際の手続きは、以下のようなステップで進めるのが一般的である。
| ステップ | 内容 | 主な提出・準備物 |
|---|---|---|
| STEP1 | 対象労働者との面談・意向確認 | 面談記録、希望する働き方のヒアリングシート |
| STEP2 | 柔軟な働き方支援プランの作成 | プラン原案、就業規則案 |
| STEP3 | 就業規則への規定・労働基準監督署への届出 | 改定後の就業規則、意見書 |
| STEP4 | 制度の周知 | 社内掲示物、イントラネット掲載記録 |
| STEP5 | 対象労働者による制度利用 | 制度利用申出書、利用実績が分かる勤怠記録 |
| STEP6 | 支給申請書類の提出 | 支給申請書、就業規則、賃金台帳、出勤簿等 |
制度を整備しただけでは支給対象にならず、対象労働者が実際に制度を利用した事実と、その利用状況を裏付ける客観的な記録(勤怠記録やテレワークの実施記録など)を揃えることが欠かせない。書類に不備があると審査に時間がかかるため、就業規則の改定日と制度利用の開始日の整合性、対象労働者の子の年齢要件を満たしているかどうかは、申請前に必ず確認しておきたい。
申請時の注意点とよくある不支給理由
このコースの審査でつまずきやすいポイントには、次のようなものがある。
- 1. 子の年齢要件のズレ:制度利用開始時点で対象労働者の子が3歳未満、または小学校就学後になっているケース。対象期間の起算日を勘違いしていることが多い。
- 2. 制度内容が要件を満たしていない:例えば「テレワーク等」として認められるには、一定の頻度や期間の利用実績が求められる場合がある。名ばかりの制度にならないよう、実際の運用ルールを具体的に定めておく必要がある。
- 3. 就業規則への規定が不十分:口頭やメールでの案内だけでは足りず、就業規則や労使協定など、正式な規程として整備されていることが前提になる。
- 4. 利用実績を裏付ける証拠の不足:勤怠システムの記録やテレワーク実施報告など、制度を実際に使ったことを示す客観的な資料が必要になる。
こうした不備は、社内だけで手続きを進めていると見落としやすい。申請実務に詳しい社会保険労務士など専門家に相談することで、制度設計の段階からチェックを受けられ、不支給のリスクを減らせるという選択肢もある。実際、助成金は自分で申請するのは難しい?でも触れているとおり、就業規則の整備と実績記録の両立は自社担当者だけでは負担が大きい作業になりやすい。
他の両立支援メニューとの使い分け
両立支援等助成金には、この「柔軟な働き方選択制度等支援コース」以外にも複数のコースが用意されている。育休取得や育休中の代替要員確保を支援するコース、介護離職の防止に取り組む企業を支援するコースなど、目的に応じて選択肢が分かれている。自社の課題が「育児期の柔軟な働き方の整備」なのか、「育休取得の促進」なのか、「介護との両立」なのかによって、活用すべきコースは異なる。
例えば、育児休業からの復帰支援だけでなく、介護と仕事の両立にも課題を抱えている企業であれば、介護離職防止に使える助成金もあわせて検討する価値がある。また、女性の活躍推進と育児支援を総合的に進めたい企業は、女性活躍推進・育児支援助成金完全ガイドで全体像を把握しておくと、複数の助成金を組み合わせた計画が立てやすくなる。助成金全体の手続きの基本を押さえたい場合は、助成金の申請方法完全ガイドも参考になる。
専門家に依頼するという選択肢
制度設計から就業規則の改定、利用実績の記録整備、支給申請書類の作成まで、このコースは他の助成金と比べても準備すべき書類の種類が多い。社内の人事担当者だけで対応する場合、通常業務と並行して進めることになるため、着手が遅れて申請期限に間に合わなくなるケースも見られる。
こうした負担を軽減する方法として、助成金の申請支援を専門に行う社会保険労務士やコンサルティング会社に依頼する選択肢もある。制度設計の段階から相談することで、要件を満たさない制度を作ってしまうリスクを避けやすくなる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子の年齢が3歳を超えていても対象になりますか?
対象となるのは3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者である。3歳未満の子や、すでに小学校に入学した子については、このコースの対象外となる。年齢の判定時点は制度利用開始時点が基準になるため、開始日を誤らないよう注意したい。
Q2. 制度は1つ導入するだけでも申請できますか?
コースの趣旨は「柔軟な働き方支援プラン」に基づき複数の制度を組み合わせて労働者に利用させることにある。1つの制度だけでは要件を満たさない、あるいは支給区分が低くなる可能性があるため、複数制度の導入を前提に計画することが望ましい。
Q3. テレワークを導入していれば自動的に対象になりますか?
単にテレワークを導入しているだけでは不十分で、就業規則等への規定、対象労働者への周知、実際の利用実績の記録が揃っている必要がある。名目だけの制度にならないよう、運用ルールを具体的に定めておくことが重要である。
Q4. 支給申請はいつ行えばよいですか?
対象労働者が制度を実際に利用した後、一定期間の利用実績が確認できた時点で支給申請を行う流れが一般的である。申請できる期間には期限が設けられているため、制度利用開始時点であらかじめ申請スケジュールを確認しておくことをおすすめする。
Q5. 自社だけで手続きを進めるのは難しいですか?
就業規則の改定や利用実績の記録整備など専門知識が必要な工程が多く、自社の人事担当者だけで対応すると時間がかかりやすい。社会保険労務士など専門家に相談し、制度設計の段階からチェックを受けることで、不備による不支給のリスクを抑えられる。
まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を
両立支援等助成金「柔軟な働き方選択制度等支援コース」は、3歳から就学前の子を養育する労働者向けに複数の柔軟な働き方の制度を整え、実際に利用させることで支給される助成金である。制度設計・就業規則の改定・利用実績の記録という3つの工程を丁寧に進めることが、支給申請を成功させる鍵になる。
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