キャリアアップ助成金「正社員化コース」の申請方法【2026年版】|転換前後の要件と手続きの流れ

キャリアアップ助成金「正社員化コース」の申請方法【2026年版】 雇用・採用助成金

キャリアアップ助成金「正社員化コース」は、有期雇用労働者やパート・派遣社員を正社員(無期雇用の正規雇用労働者)に転換した事業主が受け取れる助成金です。ポイントは「キャリアアップ計画書の事前提出」「就業規則への転換規定」「転換前後それぞれ6ヶ月の雇用実績」の3点。この記事では申請の順序と必要書類を、実務の流れに沿って解説します。

キャリアアップ助成金「正社員化コース」とは何か

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者・派遣労働者・パートタイム労働者といった非正規雇用の労働者を、正社員化や処遇改善によって企業内でキャリアアップさせた事業主を助成する厚生労働省の制度です。全部で複数のコースがありますが、なかでも「正社員化コース」は申請件数が多く、非正規社員の定着や採用コスト削減に悩む中小企業から特に注目されています。

対象となるのは、有期雇用労働者や無期雇用労働者(正規雇用労働者ではない者)を、就業規則等に定めた転換制度にもとづいて正規雇用労働者・無期雇用労働者に転換、または派遣労働者を派遣先の事業主が直接雇用した場合です。単に契約書の雇用形態欄を書き換えるだけでは要件を満たさず、賃金体系や待遇の見直しを伴う実質的な転換であることが求められます。

対象となる労働者・事業主の要件

助成金を受け取るには、転換する労働者と転換を行う事業主の双方が一定の要件を満たしている必要があります。あいまいな理解のまま手続きを進めると、審査段階で不支給になるケースが少なくありません。

  • 転換前6ヶ月間において、雇用保険被保険者として有期雇用等の状態で継続して雇用されていること
  • 転換後、正規雇用労働者・無期雇用労働者として6ヶ月分の賃金が支払われていること
  • 転換後の賃金が、転換前と比較して一定以上増額していること(昇給を伴わない名ばかりの転換は対象外)
  • 就業規則・労働協約等に、有期雇用労働者から正規雇用労働者等への転換制度が明文化されていること
  • 事業主がキャリアアップ管理台帳を整備し、対象労働者の雇用形態の変更を記録していること
  • 転換制度の規定日から転換までに一定の運用実績があり、制度の存在を証明できること

なお、事業主の3親等以内の親族や、他の助成金と重複して同一の措置に対して申請している場合は対象外となるため、事前確認が欠かせません。

申請前に必ず行う「キャリアアップ計画書」の提出

正社員化コースを申請するうえで最初につまずきやすいのが、キャリアアップ計画書の提出タイミングです。この計画書は、実際に転換を実施する前に管轄の労働局またはハローワークへ提出し、受理されている必要があります。転換を先に行ってから計画書を出しても、原則としてその転換は助成対象になりません。

キャリアアップ計画書には、計画期間(3年程度が目安)、対象となる労働者の区分、取り組む内容(正社員転換の実施等)を記載します。計画期間内であれば複数回の転換をまとめて対象にできるため、複数名の非正規社員を段階的に正社員化していく企業ほど、計画書を早めに整えておくメリットが大きくなります。

就業規則への転換規定の整備

キャリアアップ計画書と並んで重要なのが、就業規則(または労働協約)への転換制度の明記です。「正社員登用制度」「無期転換制度」といった名称で、対象者の条件・選考方法・転換後の労働条件が具体的に記載されている必要があります。

すでに就業規則に登用制度の記載がある会社でも、内容が古いままだったり、対象範囲があいまいだったりするケースは珍しくありません。申請前に社会保険労務士等に確認してもらい、記載内容が現行の運用実態と一致しているかをチェックしておくと、審査段階での差し戻しを防げます。

転換から支給申請までの手続きの流れ

正社員化コースの手続きは、時系列で見ると次の順序になります。ここを取り違えると助成対象から外れてしまうため、必ず流れの通りに進めてください。

ステップ 内容 タイミングの目安
1 キャリアアップ計画書を労働局・ハローワークへ提出し受理される 転換実施日の前日まで
2 就業規則・労働協約に転換制度を規定する 計画書提出後、転換実施前
3 対象労働者を有期雇用等の状態で6ヶ月以上継続雇用する 転換前の実績期間
4 転換制度にもとづき正規雇用労働者・無期雇用労働者へ転換する 計画期間内
5 転換後、6ヶ月分の賃金を支払う 転換日から6ヶ月間
6 支給申請書を管轄労働局・ハローワークへ提出する 6ヶ月経過日の翌日から2ヶ月以内
7 審査ののち支給決定・入金 申請から数ヶ月後

特に見落とされがちなのが、6のタイミングです。「6ヶ月経過日の翌日から2ヶ月以内」という期限を過ぎると、要件をすべて満たしていても申請自体を受け付けてもらえません。転換日をカレンダーやキャリアアップ管理台帳にしっかり記録し、期限管理を徹底することが重要です。

支給額の目安と年度ごとの見直し

正社員化コースの支給額は、対象労働者の雇用形態の転換パターン(有期→正規、無期→正規)と、企業規模(中小企業か大企業か)によって区分されています。なお、以前あった「有期→無期」への転換は、令和4年10月の改正で正社員化コースの対象から外れています。令和6年度以降の制度では、中小企業が有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換した場合、1人あたり80万円(40万円ずつ2期に分けて支給)が基本的な水準とされてきました。

転換パターン 中小企業の目安 大企業の目安
有期雇用 → 正規雇用 80万円(40万円×2期) 60万円(30万円×2期)
無期雇用 → 正規雇用 40万円(20万円×2期) 30万円(15万円×2期)

このほか、母子家庭の母・父子家庭の父を転換した場合や、勤務地限定・職務限定の正社員として転換した場合など、条件に応じた加算措置が用意されていることがあります。加算の有無や金額は毎年のように見直されるため、正確な最新額は必ず厚生労働省の公式サイトで確認してください。

※本記事の支給額は2026年9月時点で確認できる情報にもとづいています。制度は年度ごとに要件・金額が改定されるため、申請前に必ず最新の支給要領を厚生労働省の公式サイトでご確認ください。

よくある不支給理由と対策

正社員化コースは申請件数が多い分、書類不備や要件の誤解による不支給も一定数発生しています。代表的なパターンは次のとおりです。

  • キャリアアップ計画書の提出が転換実施後になっていた
  • 就業規則の転換規定が形式的で、実際の転換プロセスと整合していなかった
  • 転換後の賃金増額幅が基準に届いていなかった
  • キャリアアップ管理台帳の記載に不備があり、雇用形態の変更を客観的に証明できなかった
  • 支給申請の提出期限(2ヶ月以内)を過ぎていた

これらの多くは、計画書提出前の準備段階でチェックしておけば防げるものです。不支給になりやすいパターンの詳細は助成金がもらえない・不支給になる理由TOP10でも整理していますので、あわせて確認しておくと安心です。

自社申請と専門家への依頼、どちらが向いているか

キャリアアップ助成金は制度の枠組み自体は明快ですが、就業規則の整備や賃金台帳の管理など、実務上は労務管理全般の知識が求められます。特に複数名を並行して正社員化していく場合、対象者ごとに転換日・6ヶ月経過日・申請期限がずれるため、管理が煩雑になりがちです。

自社の総務担当者が制度を正しく理解し、期限管理を徹底できるなら自分で申請することも十分可能です。一方で、就業規則の見直しから複数コースの併用検討まで一括して任せたい場合は、社会保険労務士など外部の専門家に申請代行を依頼する事業主も増えています。代行費用の相場感は助成金の代行費用相場で解説していますので、依頼するかどうかの判断材料にしてください。また、キャリアアップ助成金には正社員化コース以外にも複数のコースがあり、自社の状況によっては併用できる場合があります。全体像はキャリアアップ助成金の全コース比較を参考にしてください。申請書類の準備全般については助成金申請に必要な書類一覧も参照すると準備漏れを防げます。

よくある質問(FAQ)

Q1. キャリアアップ計画書は転換のたびに毎回出し直す必要がありますか?

計画期間(目安3年程度)を設定して提出するため、期間内であれば複数回・複数名の転換をまとめて対象にできます。ただし計画期間が満了する場合は延長の手続きが必要です。

Q2. パートタイマーから正社員への転換も対象になりますか?

パートタイム労働者であっても、雇用保険被保険者として有期雇用等の状態にあり、他の要件を満たしていれば対象になり得ます。雇用形態の名称よりも、実際の契約内容と雇用保険の加入状況が判断基準になります。

Q3. 転換後に自己都合退職してしまった場合はどうなりますか?

転換後6ヶ月分の賃金支払いが要件のため、6ヶ月に満たない時点で退職すると、その労働者分は原則として支給対象外になります。定着支援の観点からも、転換後のフォロー体制を整えておくことが望まれます。

Q4. 派遣社員を直接雇用した場合も同じ枠組みですか?

派遣労働者を派遣先が正規雇用労働者・無期雇用労働者として直接雇用した場合も、正社員化コースの対象になります。ただし派遣元・派遣先双方での手続きや確認事項があるため、通常の転換より書類が増える点に注意してください。

Q5. 就業規則がまだ整備されていない場合、今から間に合いますか?

キャリアアップ計画書の提出前に就業規則の転換規定を整えれば申請は可能です。ただし規定の整備には社内周知の期間も必要になるため、転換を検討し始めた時点で早めに着手することをおすすめします。

まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を

キャリアアップ助成金「正社員化コース」は、キャリアアップ計画書の事前提出、就業規則への転換規定の整備、転換前後それぞれ6ヶ月の雇用実績という3つの要件を順序通りに満たすことが支給のカギです。支給申請の期限(6ヶ月経過日の翌日から2ヶ月以内)を過ぎると申請自体ができなくなるため、期限管理には特に注意しましょう。

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