ビルメンテナンス業の人手不足に使える助成金は?【2026年版】|パート・高齢スタッフの採用と定着

ビルメンテナンス業の人手不足に使える助成金は?【2026年版】 雇用・採用助成金

ビルメンテナンス業の人手不足対策に使える国の制度は、厚生労働省のキャリアアップ助成金(パートなどを正社員に転換する正社員化コースなど)と、65歳超雇用推進助成金(高齢スタッフの雇用管理制度の整備や無期雇用への転換)が中心になる。清掃・設備管理の現場はパートと高齢スタッフが支える比率が高く、採用だけでなく「辞めさせない」仕組みづくりに助成金を当てるのが現実的である。本記事は、制度ごとの金額と条件を厚生労働省の一次資料で確認し、ビルメン会社の経営者が自社に合う組み合わせを選べるように整理する。

この記事でわかること

  • ビルメンの人手不足を「採用」「定着」「高齢者の活用」の3つに分けて考える方法
  • キャリアアップ助成金の正社員化コースの金額と、金額が分かれる条件
  • 65歳超雇用推進助成金で高齢スタッフ向けの制度整備や無期雇用転換に使える額
  • パート・短時間スタッフが多い現場で、助成金の対象になるかを分ける線引き
  • 申請を誤ると対象外になる注意点

ビルメンの人手不足を3つの課題に分けて制度を当てはめる

ビルメンテナンス業は、日常清掃、定期清掃、設備管理、警備や受付の兼務など、時間帯も業務内容もさまざまな現場を抱える。一般に、清掃を担う短時間のパートスタッフと、経験を積んだ高齢のスタッフに頼る構造になりやすく、採用の難しさと現場の定着率が経営課題になりやすい。

課題を分けると、使える制度が見えてくる。

課題 状況の例 当てはめやすい制度
採用 求人を出しても応募が集まらない 特定求職者雇用開発助成金(高齢の求職者の雇入れ)。人材確保等支援助成金は別記事も参照
定着 パートが数か月で辞める、待遇に不満が出る キャリアアップ助成金(正社員化、賞与・退職金制度導入など)
高齢スタッフの活用 60歳を過ぎても働いてもらいたいが制度がない 65歳超雇用推進助成金(雇用管理制度の整備、無期雇用転換)

本記事では、厚生労働省の一次資料で金額と条件を確認できた「定着」と「高齢スタッフの活用」を中心に扱い、採用面は条件が変わりやすい点だけを短く押さえる。

キャリアアップ助成金|パート・有期スタッフの正社員化と待遇改善

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者の処遇改善を支援する制度である。厚生労働省のページによれば、令和8年度のコースは、正社員化コース、障害者正社員化コース、賃金規定等改定コース、賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コース、短時間労働者労働時間延長支援コースの6つである。

なお、かつてあった「社会保険適用時処遇改善コース」は、令和8年度のコース一覧に載っていない。以前の資料を見て計画を立てている場合は、現行のコースに読み替える必要がある。

正社員化コースの金額と条件

ビルメンの現場でまず検討したいのが正社員化コースである。厚生労働省「正社員化コースのご案内」(令和8年4月8日版)による、中小企業の1人あたりの助成額は次のとおりである。

正社員化前の雇用形態 重点支援対象者 上記以外
有期雇用労働者 80万円(40万円×2期) 40万円(40万円×1期)
無期雇用労働者 40万円(20万円×2期) 20万円(20万円×1期)

80万円は「重点支援対象者」に限った金額であり、それ以外の有期雇用労働者は40万円である。重点支援対象者とは、雇入れから3年以上の有期雇用労働者、一定の職歴要件を満たす有期雇用労働者、派遣労働者や母子家庭の母等などが該当する。新規学卒者で雇い入れから一定期間が経っていない者は、支給対象外とされている。

受給条件は主に次の3つである。

  1. 1. 正規雇用に転換する前日までに、キャリアアップ計画を作成して提出していること
  2. 2. 正規雇用への転換制度を就業規則などに規定していること
  3. 3. 転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間より3%以上増額させていること

この助成金で押さえておきたいのは、キャリアアップ助成金上の「正規雇用労働者」の定義である。同一事業所の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用され、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が転換時点で適用されている者に限られる。ビルメンでは、正社員に賞与や昇給の仕組みが実質的にない会社だと、制度整備から始める必要がある。この点は賞与や退職金の制度がない会社でも助成金は受給できる?で確認できる。

加算制度もある。1事業所あたり1回のみ、正社員転換制度を新たに規定して転換した場合は20万円、勤務地限定・職務限定・短時間正社員のいずれかを新たに規定して転換した場合は40万円、所定の情報を公表した場合は20万円が加算される(中小企業の額)。パート中心のビルメン会社では、短時間正社員制度を設ける形が現実的な選択肢になりうる。

賞与・退職金制度導入コースと労働時間延長支援コース

厚生労働省のページでは、賞与・退職金制度導入コースは、有期雇用労働者等を対象に賞与または退職金制度を導入し、支給または積立てを行う取組が対象とされている。短時間労働者労働時間延長支援コースは、有期雇用労働者等が新たに社会保険の適用となる際に、労働時間の延長などで収入を増やす取組が対象である。支給額は年度のパンフレットに記載があるため、申請前に令和8年度の資料で確認してほしい。

清掃スタッフのように、週の所定労働時間が短いパートが多い会社では、社会保険の適用や年収の壁が就業調整の原因になりやすい。背景と対応は「年収の壁」で従業員の手取りが減る会社の対応と使える助成金を参照してほしい。

65歳超雇用推進助成金|高齢スタッフの雇用管理を整える

ビルメンでは、経験豊富な高齢スタッフが現場の要になっていることが多い。65歳超雇用推進助成金は、高齢者の雇用の推進を目的に、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が窓口となる制度である。申請先は労働局ではなく、JEEDの各都道府県支部である点に注意したい。

厚生労働省の令和8年度リーフレットによると、コースは次の3つである。

コース 内容 中小企業の支給額の例
65歳超継続雇用促進コース 65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、66歳以上への継続雇用制度の導入など 措置の内容、年齢の引上げ幅、60歳以上の被保険者数で決まる(リーフレットの表で確認)
高年齢者評価制度等雇用管理改善コース 高年齢者向けの評価・賃金制度、短時間勤務制度、研修制度などの導入・改善 評価・賃金・人事処遇制度の導入・改善は60万円、短時間勤務制度などは30万円
高年齢者無期雇用転換コース 50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換 対象労働者1人あたり40万円

高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの要点

このコースは、高齢者向けの雇用管理制度を整えた事業主に、一部経費を助成する。対象の措置は、高齢者の職業能力を評価する仕組みと賃金・人事処遇制度の導入または改善、希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度などの導入または改善、在宅勤務制度、研修制度、法定外の健康管理制度などである。複数の措置を同じ計画で実施した場合の支給額は、いずれか高い額になる。

清掃現場では「週に数日だけ働きたい」「体力に合わせて時間を短くしたい」という高齢スタッフの希望が多い。短時間勤務制度や隔日勤務制度を就業規則に整えることは、このコースの措置に該当しうる。

手続きには順序がある。雇用管理整備計画書を、計画開始の3か月前の日までにJEEDへ申請して認定を受ける必要がある。計画に基づいて措置を実施し、計画終了日の翌日から6か月間の運用状況を明らかにする書類を整備したうえで、支給を申請する。また、支給申請日の前日に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者のうち、計画終了日の翌日から6か月以上継続して雇用されている者が1人以上いることが要件である。

高年齢者無期雇用転換コースの要点

50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換した場合に、1人あたり40万円(中小企業)が支給される。主な条件は次のとおりである。

  • 有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する制度を就業規則等に規定していること(実施時期が明示され、契約期間が通算して1年以上5年以内の者を転換するものに限る)
  • 転換後6か月以上継続して雇用し、転換後6か月分の賃金を支給していること
  • 無期雇用転換日に64歳以上の者は対象にならない
  • 支給申請年度における対象労働者数の合計は、1適用事業所あたり10人までである

このコースも、無期雇用転換計画書を計画開始の3か月前の日までにJEEDへ提出し、認定を受ける必要がある。先に転換してしまうと対象にならない可能性が高いため、順序を守ってほしい。

採用面で押さえたい特定求職者雇用開発助成金の変更点

高齢のスタッフを新たに採用する場合に候補になるのが、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)である。ハローワーク鳥取(厚生労働省の労働局サイト)の案内によれば、令和8年5月1日以降は、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている60歳以上の高年齢者が対象労働者となる。また、原則として、「対象労働者であること」を明示した職業紹介を経た場合にのみ、支給申請ができる。

つまり、知り合いの紹介や求人媒体で採用した高齢者は、原則として対象にならない可能性がある。ビルメン会社が高齢者の採用でこの助成金を狙うなら、求人の出し方をハローワーク経由にし、紹介時に対象労働者であることが示されているかを確認する必要がある。支給額や支給期間は、最新のリーフレットで確認してほしい。

パート・短時間スタッフが対象になるかの線引き

助成金の対象になるかどうかは、雇用保険の被保険者かどうかが分かれ目になることが多い。たとえば65歳超雇用推進助成金の要件には、雇用保険被保険者であることが含まれる。週の所定労働時間が短いパートが雇用保険に加入していない場合は、そもそも対象外になりうる。詳しい考え方は雇用保険に入っていないパートは助成金の対象になる?を参照してほしい。

確認項目 理由
対象者が雇用保険の被保険者か 65歳超雇用推進助成金の要件で、被保険者であることが前提となる箇所がある
有期か無期か、通算の雇用期間 正社員化コースの金額や重点支援対象者の判定に影響する
就業規則に転換制度や賞与・昇給が規定されているか キャリアアップ助成金上の正規雇用労働者の要件になる
年齢(50歳以上、60歳以上、64歳以上) 高年齢者無期雇用転換コースの対象年齢と除外年齢

想定事例|パート中心の清掃会社が制度を組み合わせる場合

次の事例は、制度の使い方を示すための想定であり、実在の会社の実績ではない。

従業員25人(雇用保険加入のパートや有期社員を含む)のビルメン会社が、人手不足の解消のために、次の順序で制度整備を進める。

  1. 1. 就業規則に、パートから短時間正社員への転換制度と、賞与・昇給の規定を整える
  2. 2. キャリアアップ計画を提出したうえで、条件を満たす有期スタッフを短時間正社員に転換する
  3. 3. 高齢スタッフが多い現場では、短時間勤務制度の整備について雇用管理整備計画書をJEEDに提出する
  4. 4. 50歳以上の有期スタッフのうち希望者を、計画の認定後に無期雇用へ転換する

それぞれの制度は申請先、計画の提出時期、対象者の要件が異なる。同じ労働者に複数の助成金を申請できるかどうかも、支給要領の併給調整の規定による。あくまで要件を満たしていることが前提で、受給が保証されるものではない。

申請で失敗しやすい注意点

  • 計画の提出が転換や制度導入の「前」であること(キャリアアップ計画は転換前日まで、JEED系の計画書は開始の3か月前まで)
  • 就業規則の整備は、単なる書面ではなく、実際の運用が伴っていること
  • 転換後の賃金が3%以上増えていること(正社員化コース)
  • 対象者の離職など、返還につながる事情が生じた場合の扱い。キャリアアップ助成金の対象者が退職したら?で確認できる
  • 労働関係法令の違反があると不支給の原因になりうる。残業代の未払いなどは残業代の未払いがあると助成金はもらえない?を参照

よくある質問

Q1. パートを正社員にすれば、必ず40万円や80万円がもらえますか。

いいえ。80万円は重点支援対象者に限った金額で、それ以外の有期雇用労働者は40万円です。さらに、計画の事前提出、就業規則の規定、転換後6か月の賃金3%以上増額などの条件があり、審査もあります。

Q2. 65歳超雇用推進助成金は、どこに申請しますか。

労働局ではなく、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の各都道府県支部が窓口です。電子申請はe-Govを利用します。

Q3. 高齢スタッフを無期雇用にすると、何歳まで対象ですか。

高年齢者無期雇用転換コースは、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者が対象で、無期雇用転換日に64歳以上の方は対象になりません。

Q4. 助成金の申請は自社でもできますか。

自社でも申請できます。ただし計画の提出時期や就業規則の整備など、順序を誤ると対象外になる制度が多いため、不安がある場合は社会保険労務士など専門家への相談を検討してください。

参照した厚生労働省の一次資料(2026年10月29日確認)

  • キャリアアップ助成金(厚生労働省):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
  • キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご案内(令和8年4月8日版):https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001687990.pdf
  • 特定求職者雇用開発助成金(高年齢者の要件見直し・ハローワーク鳥取):https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-hellowork/list/newpage_00001.html
  • 65歳超雇用推進助成金(厚生労働省):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139692.html
  • 令和8年度 65歳超雇用推進助成金のご案内(リーフレット):https://www.mhlw.go.jp/content/001233792.pdf

業種全体の制度を確認したい場合は、ビルメンテナンス・清掃業が使える助成金・補助金まとめと、キャリアアップ助成金「正社員化コース」の申請方法、65歳超雇用推進助成金の完全ガイドもあわせて確認してほしい。

まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を

ビルメンの人手不足は、採用だけでなく定着と高齢スタッフの活用を分けて考えると、使える制度が見えてくる。パート・有期スタッフにはキャリアアップ助成金の正社員化コース、高齢スタッフにはJEEDの65歳超雇用推進助成金が候補になる。どちらも計画の事前提出と就業規則の整備が必要で、審査があり、要件を満たしていることが前提である。

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