結論、「年収の壁」で従業員の手取りが減る、あるいはパートが就業調整で勤務を減らす会社は、手当で穴埋めする前に、キャリアアップ助成金の「短時間労働者労働時間延長支援コース」や「正社員化コース」を軸に、働き方そのものを設計し直すほうが費用対効果が高い。まず押さえたい期限は3つある。社会保険の賃金要件(月額8.8万円)が2026年10月に撤廃されたこと、2027年10月に企業規模要件が36人以上へ引き下げられること、そして年内のシフト調整が最も増える秋から年末までにパートの意向を聞いておくことだ。旧「社会保険適用時処遇改善コース」は2026年3月31日で終了しているため、古い解説をもとに動くと申請できない。本記事では、経営課題から制度に着地する形で、会社がいつまでに何をすべきかを表で整理する。金額や要件は年度ごとに改定されるため、最終確認は最新の支給要領で行ってほしい。
この記事でわかること
- 「年収の壁」が会社の人手不足と人件費にどう響くか
- 従業員の手取りがどれだけ減るのかの考え方と概算
- 手当で補う場合と、助成金を使って設計し直す場合の違い
- 「この課題にはこの制度」の対応表
- 助成金を取りこぼさないための手順
年収の壁とは|会社が知っておくべき3つの壁と期限
年収の壁とは、一定の収入を超えると税金や社会保険料の負担が発生し、手取りが減ってしまう境目のことだ。働く本人だけの問題に見えるが、実際には会社の人手不足に直結する。年末が近づくと「これ以上働くと損をする」と考えるパートが勤務を減らし、シフトに穴があくためだ。
| 壁 | 内容 | 会社への影響 |
|---|---|---|
| 106万円の壁(社会保険) | 従業員数の多い会社で週20時間以上働くと、自分で厚生年金・健康保険に加入する。賃金要件(月額8.8万円)は2026年10月に撤廃された | 加入者が増え、事業主負担も増える |
| 130万円の壁(社会保険の扶養) | 年収が一定額以上になると、配偶者などの扶養から外れ、自分で保険料を負担する | 就業調整の主な原因になる |
| 税金の壁 | 所得税や住民税、配偶者控除などの境目。税制改正で見直しが進んでいる | 配偶者手当の支給基準にも影響する |
※制度は改正が続いている。税金の壁の金額は最新の国税庁の情報で確認してほしい。
特に重要なのは、社会保険の賃金要件が撤廃された点だ。これまでは月額8.8万円(年収換算で約106万円)が分かれ目だったが、今後は「週20時間以上かどうか」が実質的な基準になる。企業規模の基準も、2027年10月に従業員数36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上と段階的に引き下げられ、2035年10月には従業員数による区別がなくなる予定だ。適用拡大の全体像は助成金と社会保険適用拡大対応で使える支援制度まとめでも整理している。
「年収の壁」で従業員の手取りはどれだけ減るのか
会社として対策を考える前に、従業員が壁を越えたときの実感を数字で理解しておきたい。社会保険に加入すると、本人は厚生年金保険料(料率18.3%の半分の9.15%)と健康保険料(仮に約5%)を負担する。合計で賃金の約14%程度だ。
| 年収(賃金) | 社会保険に未加入 | 社会保険に加入(本人負担約14%と仮定) |
|---|---|---|
| 100万円 | 手取り約100万円 | -(週20時間未満なら未加入) |
| 106万円 | 手取り約106万円 | 手取り約91万円 |
| 117万円 | 手取り約117万円 | 手取り約100万円 |
| 125万円 | 手取り約125万円 | 手取り約107万円 |
※社会保険料の本人負担のみを概算し、所得税・住民税・雇用保険料は除く。実際の保険料率は加入先や都道府県によって異なる。
この表のとおり、年収106万円で加入すると、手取りは約91万円に下がる。加入前の水準である100万円の手取りに戻すには、年収を約117万円まで増やす必要がある。この「逆転ゾーン」が、パートが勤務を抑える大きな理由だ。
一方で、社会保険に加入すれば、将来の厚生年金の受給額が増える、傷病手当金や出産手当金が受けられるといった利点もある。働く側にとってメリットを伝えられるかどうかが、就業調整を減らす鍵になる。
会社が直面する3つの経営課題
年収の壁への対応は、会社ごとに課題の形が異なる。代表的なものを整理する。
課題1:就業調整によるシフトの穴
年末に向けて、パートが勤務時間を減らす。繁忙期ほど人手が足りなくなり、正社員への負担や残業が増える。
課題2:手取り補填のコスト
従業員が加入しても手取りが減らないよう、会社が手当を出す場合がある。ただし手当は賃金として扱われ、社会保険料の対象になるため、会社の負担はさらに増える。
課題3:社会保険料の事業主負担
加入者が増えるほど、事業主の保険料負担が積み上がる。保険料と助成金のバランスは、社会保険料を節約しながら助成金を最大受給する方法も参考になる。
手当で補う場合と、設計し直す場合の違い
手取りの減少を手当で埋める方法は、短期的には分かりやすい。しかし、長期の費用と効果を比べると、設計し直す方法のほうが有利になる場合が多い。
| 対応方針 | 内容 | 会社のコスト | 助成金の対象 |
|---|---|---|---|
| 手当で補填 | 加入による手取り減少を手当で補う | 手当+保険料の増加分が毎年続く | 原則として対象外 |
| 労働時間を延ばして戦力化 | 週の所定労働時間を延ばし、賃金も増やす | 賃金増+保険料 | 短時間労働者労働時間延長支援コース |
| 正社員へ転換 | 意欲のあるパートを正社員にする | 賃金増+保険料 | 正社員化コース |
| 賃金規定を改定 | 時給や基本給を見直す | 賃金増 | 賃金規定等改定コース |
| 働き方を現状維持 | 壁の手前で働いてもらう | 人手不足のまま | 該当なし |
重要なのは、手取りの穴埋めを毎年の手当で続けるより、労働時間と賃金を同時に増やして「壁を越えても得になる」設計にすることだ。会社の戦力は増え、助成金も受けられる可能性が出てくる。
「この課題にはこの制度」対応表
| 経営課題 | 向いている制度 | 狙い |
|---|---|---|
| パートの就業調整でシフトに穴があく | キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長支援コース | 週の所定労働時間を延ばし、社会保険に加入させる取り組みを支援 |
| 手取りが減る不安で働きたがらない | 同上+賃金規定等改定コース | 労働時間の延長と賃金の増額を組み合わせる |
| 戦力として長く働いてほしい | キャリアアップ助成金 正社員化コース | パートから正社員への転換を支援 |
| 賞与や退職金で定着を促したい | 賞与・退職金制度導入コース | 制度導入を支援 |
| 時給を最低賃金以上に引き上げたい | 業務改善助成金 | 設備投資とセットで賃上げを支援 |
| 離職率を下げたい | 人材確保等支援助成金 | 雇用管理制度の整備を支援 |
短時間労働者労働時間延長支援コースの型
令和8年度(2026年度)のキャリアアップ助成金は全6コース構成で、社会保険の加入と収入増加の取り組みをセットで支援するのが、このコースだ。公表されている支給額の目安は、小規模企業で1年目50万円・2年目25万円の最大75万円、中小企業で1年目40万円・2年目20万円の最大60万円(いずれも1人あたり)となっている。
1年目の取り組みは、週の所定労働時間を5時間以上延長する形が基本で、延長が5時間に満たない場合は賃金の増額を組み合わせる。2年目は、さらなる労働時間の延長や基本給の増額、賞与・退職金制度の適用などが求められる。対象労働者の雇用期間や取り組みの実施時期の細かな条件は、支給要領で確認が必要だ。
旧コースとの違いに注意
以前の「社会保険適用時処遇改善コース」は、2026年3月31日までに新たに社会保険へ加入した労働者への取り組みが対象で、同年4月1日以降の加入は対象外になった。年収の壁対策は、上記の短時間労働者労働時間延長支援コースに引き継がれている。
正社員化コースで「壁そのもの」をなくす
パートが就業調整をする根本原因は、壁の内側にとどまりたいという心理だ。正社員化は、その壁自体をなくす選択肢になる。公表されている令和8年度の目安は、中小企業で有期から正規への転換が重点支援対象者で80万円、その他は40万円だ。詳しい要件はキャリアアップ助成金 正社員化コースの申請方法で解説している。コース全体の使い分けはキャリアアップ助成金の全コース比較を参照してほしい。
助成金を取りこぼさないための手順
- 1. パートの意向を聞く:年内のうちに、働き方の希望と壁への意識を面談で確認する
- 2. 対象者の整理:週の所定労働時間、雇用期間、社会保険の加入状況を一覧にする
- 3. 方針の決定:労働時間の延長、正社員化、賃金の改定のどれを選ぶかを決める
- 4. キャリアアップ計画の届出:取り組みを始める前に、管轄の労働局へ提出する
- 5. 就業規則・雇用契約書の改定:労働時間や賃金の変更を反映する
- 6. 取り組みの実施と記録:出勤簿・賃金台帳を整備する
- 7. 支給申請:定められた期間内に申請する
計画の届出より前に取り組みを始めると、対象外になる恐れがある。パートへ説明する前に、会社側の準備を済ませておきたい。
年収の壁対応でよくある失敗
- 手当を出すだけで終わり、毎年のコストだけが積み上がった
- 助成金の計画届を出す前に、労働時間を延ばしてしまった
- 本人に社会保険のメリットを説明せず、かえって退職された
- 賃金台帳が整っておらず、実績が証明できなかった
雇用保険に入っていないパートの扱いは雇用保険に入っていないパートは助成金の対象になる?で詳しく説明している。加入義務の考え方は社会保険に未加入の会社でも助成金はもらえる?も確認しておきたい。
専門家に頼むときの選び方
年収の壁への対応は、保険料の試算、就業規則の改定、助成金の計画届、パートへの説明と、作業が多岐にわたる。社内に担当者がいない場合は、社会保険労務士や助成金コンサルティングの活用も一案だ。
選ぶ際は、着手金、月額費用、申請代行の手数料、保証の範囲を比較したい。True Partners(トゥルーパートナーズ)は、着手金0円で、月額と申請代行手数料を組み合わせたプランを用意しており、プランによって対応範囲や保証の有無が異なる。自社の人数と目的に合わせて選んでほしい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 手当で手取りを補填するのは違法ですか?
A. 違法ではないが、手当は賃金として扱われ、社会保険料の対象になる。会社の負担が毎年増える点は理解しておきたい。
Q2. 130万円の壁は、会社が証明すれば越えても大丈夫ですか?
A. 一時的な収入増加について、事業主の証明で扶養のままでいられる運用が設けられている。ただし回数などの条件があり、最新の運用は日本年金機構で確認してほしい。
Q3. 従業員が少ない会社でも助成金の対象になりますか?
A. 企業規模に応じた金額の区分があり、小規模企業のほうが高い設定の場合がある。対象になるかは支給要領で確認が必要だ。
Q4. 助成金をもらうために、パートに社会保険への加入を強制できますか?
A. 加入は法令にもとづく義務で、本人の同意で選べるものではない。ただし、労働時間の延長などは雇用契約の変更になるため、本人への説明と同意が必要になる。
Q5. 給与計算に誤りがあった場合はどうなりますか?
A. 支給額に影響する可能性がある。対象期間や支給額の算定に関わるため、見つけた時点で早めに専門家か労働局へ相談したい。
まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を
年収の壁は、パートの就業調整による人手不足と、手取り補填のコストという2つの形で会社を圧迫する。手当で埋めるより、労働時間の延長や正社員化と助成金を組み合わせて設計し直すほうが、長期の負担を抑えやすい。旧コースは2026年3月末で終了しており、計画届は必ず取り組みの前に出すことが取りこぼしを防ぐ最大のポイントだ。
| プラン | 月額 | 申請代行手数料 | 保証 |
|---|---|---|---|
| ライト | 10,000円 | 受給額の25% | - |
| スタンダード(人気プラン) | 33,000円 | 受給額の15% | - |
| プレミアム(イチオシ) | 55,000円 | 受給額の15% | 受給額保証※ |
※プレミアムプランは年間の受給額が60万円に満たない場合、その差額を返金する「受給額保証」付き(税別・着手金0円)
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📞 03-6271-8714(受付 10:30〜20:00)

