結論、家族・親族を雇用しているという事実だけで会社全体が助成金の対象外になるわけではない。ただし、多くの雇用関係助成金は「同居の親族のみを雇用する事業」を適用除外としており、同居している親族である対象者本人は助成の対象人数としてカウントされないのが原則である。会社に他の一般従業員がいれば、その従業員分は通常どおり対象になり得る。以下でケース別に整理する。
結論:会社そのものではなく「対象者」の扱いが変わる
雇用保険制度、ひいてはそれを財源とする多くの雇用関係助成金は、労働者と使用者の間に明確な雇用関係があることを前提に設計されている。同居の親族は、生計を一にし、利益・利害が一致しやすい関係にあるため、労働者性の判断が難しく、雇用保険の被保険者として扱われないのが原則である。
そのため実務上の扱いは、「会社ごとNG」ではなく「同居親族である特定の個人が対象人数から外れる」という形になる。同居していない親族(別生計の親族)や、同居親族以外の一般従業員については、通常の労働者と同様に助成金の対象になり得る。まずはこの区別を正確に理解しておくことが重要である。
なぜ同居の親族は雇用保険・助成金の対象から外れるのか
同居の親族が雇用保険の被保険者として扱われない主な理由は、次のような点にある。
- 同居の親族は事業主と生計を一にしていることが多く、労働の対価として賃金を受け取っているのか、家計内での分配なのかの区別がつきにくい
- 就業実態(始業・終業時刻、業務の指揮命令関係など)が一般の労働者と同じであることを客観的に確認しづらい
- 事業主と利害が一致しやすく、労働時間や賃金の実態が恣意的に調整されるリスクがある
ただし、これらは「同居親族だから一律に除外」という単純な話ではなく、就業実態が一般労働者と同様であると認められる場合には、例外的に雇用保険の対象となるケースもある。この判断は個別の実態に基づくため、自己判断せず専門家や管轄のハローワークに確認することが望ましい。
同居親族・別居親族・一般従業員の扱いの違い
家族・親族といっても、同居しているかどうかや役職の有無によって助成金上の扱いは異なる。
| 区分 | 雇用保険・助成金上の扱いの傾向 |
|---|---|
| 同居の親族(原則) | 雇用保険の被保険者として扱われず、助成の対象人数から除外されるのが原則 |
| 同居の親族で就業実態が一般労働者と同様と認められる場合 | 例外的に対象となり得るが、個別の実態確認が必要 |
| 別居の親族(生計を別にする) | 一般の労働者と同様に扱われることが多い |
| 親族ではない一般従業員 | 通常どおり助成の対象になり得る |
| 事業主本人・役員 | 労働者ではないため、そもそも助成の対象人数に含まれない |
家族経営・同族会社が助成金を活用するときの考え方
同居親族を多く雇用している家族経営の会社であっても、次のような形で助成金を活用できる余地はある。
- 1. 同居親族以外の一般従業員(パート・アルバイトを含む)を対象にした制度を検討する
- 2. 今後、同居親族以外の人材を新規採用する計画があれば、採用・定着系の助成金の対象範囲が広がる
- 3. 賃上げ・設備投資など、対象人数に関わらず活用できる制度(業務改善助成金など)もあわせて確認する
- 4. 別居している親族を雇用する場合は、雇用契約・就業実態を明確にしておく
事業承継の場面で親族が関わるケースについては、中小企業の事業承継・後継者育成で使える助成金・補助金まとめ【2026年版】|親族承継・M&A・従業員承継の全支援制度も参考になる。
個人事業主・小規模事業者が特に注意すべき点
親族を雇用しているケースは、法人よりも個人事業主・小規模事業者で多く見られる。個人事業主の場合、そもそも活用できる助成金・補助金の範囲が法人と異なることもあるため、あわせて確認しておきたい。
- 個人事業主が使える助成金・補助金の全体像は個人事業主・フリーランスが使える助成金・補助金まとめ【2026年版】|法人でなくても受給できる制度を厳選で確認できる
- 支給要件を満たすかどうかを申請前にチェックする書類として「支給要件確認申立書」がある。詳細は助成金の「支給要件確認申立書」とは【2026年版】|書き方と欠格事由の確認を参照してほしい
自社が対象になるかどうかを確認する進め方
家族・親族を雇用している会社が、自社にどの助成金が使えるかを整理するときは、次の順序が参考になる。
- 1. 従業員を「同居の親族」「別居の親族」「親族ではない従業員」に分類する
- 2. それぞれの人数・雇用形態・就業実態(勤務時間、業務内容、指揮命令関係)を整理する
- 3. 同居親族については、雇用保険の被保険者となっているかどうかを確認する
- 4. 今後の採用計画(親族以外の新規採用の予定など)を整理する
- 5. 上記を踏まえて、対象になり得る助成金を専門家に相談する
確認の際は、次のチェック表で従業員ごとの状況を整理しておくと、専門家への相談もスムーズになる。
| 確認項目 | 確認する書類・情報 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 同居・別居の区分 | 住民票、社内の住所記録 | 生計を同じくしているかどうか |
| 雇用保険の加入状況 | 雇用保険被保険者証、資格取得の記録 | 被保険者として手続きされているか |
| 勤務時間・出勤状況 | 出勤簿、タイムカード | 他の従業員と同様に管理されているか |
| 賃金の支払い | 賃金台帳、振込記録 | 就業規則どおりに支払われているか |
| 指揮命令関係 | 業務分担表、雇用契約書 | 事業主の指示のもとで働いているか |
自社が「何がもらえるか」を大まかに把握したい場合は、助成金で「何がもらえるか」を診断する方法|自社が使える制度の調べ方【2026年版】も参考になる。
同居親族が例外的に雇用保険の対象となるケース
同居の親族であっても、次のような要件を満たす場合には例外的に雇用保険の被保険者として認められることがある。
- 業務内容・勤務時間・賃金の決定方法などが、他の一般従業員と同様に明確な基準で管理されている
- 就業の実態について、事業主から他の労働者と同様の指揮命令を受けていると客観的に確認できる
- 賃金が労働の対価として、他の従業員と同様の基準で支払われている(家計との区別が明確である)
ただし、これらの要件を満たしているかどうかの判断は個別の実態調査に基づくものであり、書類上の体裁だけを整えても認められるとは限らない。同居親族を雇用保険の対象にしたいと考える場合は、自己判断せずハローワークや社会保険労務士に個別に相談することが不可欠である。
家族経営の会社が助成金を検討する際の心構え
家族経営・同族会社であっても、事業を継続・拡大していく過程で、いずれは親族以外の人材を採用する場面が出てくることが多い。その際に、就業規則や雇用契約書といった労務管理の土台が整っていないと、いざ助成金を活用しようとしたときに準備が追いつかないことがある。
親族中心の経営体制であっても、早い段階から一般的な労務管理の仕組み(雇用契約書の整備、労働時間管理、賃金規定の明確化など)を整えておくことで、将来的に親族以外の採用を行う際にも、助成金を含めた各種支援制度をスムーズに活用しやすくなる。目先に対象となる助成金がなくても、労務管理の土台づくりは早めに着手しておく価値がある。
親族雇用のよくある誤解
家族・親族を雇用している会社では、次のような誤解が生じやすい。
- 「親族を1人でも雇っていると会社全体が助成金の対象外になる」→誤り。対象から外れるのは原則として同居親族本人のみ
- 「別居していれば親族でも必ず対象になる」→傾向としては対象になりやすいが、就業実態によって個別判断される
- 「役員である親族も一般従業員と同様に対象人数に含まれる」→誤り。役員は労働者ではないため対象人数に含まれないのが原則
これらは制度ごとの細かい要件によって扱いが変わることもあるため、断定的な自己判断は避け、最新の支給要領や専門家への確認を前提にしたい。
専門家に相談するという選択肢
同居親族の扱いは雇用保険制度の根幹に関わる判断であり、就業実態によって例外的な扱いになることもあるため、自己判断でのリスクが大きい領域である。助成金コンサルの無料相談では、家族構成・雇用形態・就業実態をヒアリングしたうえで、対象になり得る制度と対象人数の整理をサポートしてもらうことができる。家族経営・同族会社であるほど、早い段階で専門家に状況を整理してもらう価値は大きい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 同居している配偶者を役員にすれば助成金の対象になりますか?
A. 役員は労働者ではないため、そもそも助成の対象人数には含まれないのが原則である。従業員として雇用する場合とは扱いが異なる。
Q2. 同居の親族が複数いる場合、全員が対象外になりますか?
A. 原則として同居の親族はいずれも雇用保険の被保険者として扱われないため、対象人数から外れるのが一般的な扱いである。
Q3. 親族を雇用していることを隠して申請するとどうなりますか?
A. 実態と異なる申請は不正受給に該当するリスクがあるため絶対に避けるべきである。正確な雇用実態に基づいて申請する必要がある。
Q4. 同居の親族でも社会保険には加入させるべきですか?
A. 雇用保険の被保険者となるかどうかと、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入義務は別の制度である。就業実態に応じて個別に判断が必要なため専門家に確認することをおすすめする。
Q5. 親族以外の従業員を新たに採用すれば助成金は使いやすくなりますか?
A. 親族以外の一般従業員は通常どおり対象になり得るため、新規採用によって活用できる助成金の幅が広がる可能性はある。具体的にどの制度が使えるかは採用計画の内容によって異なる。
まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を
家族・親族を雇用している会社そのものが助成金の対象外になるわけではなく、原則として対象から外れるのは同居の親族本人である。別居の親族や親族以外の従業員は通常どおり対象になり得るため、自社の雇用構成を正確に整理することが第一歩になる。自社にとって現実的な受給計画を知りたい場合は、専門家によるシミュレーションを活用するのも一つの方法だ。
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