結論から言うと、ハローワーク以外の求人で採用しても、もらえる助成金はある。ただし制度によって扱いが分かれる。 トライアル雇用助成金や特定求職者雇用開発助成金は、ハローワークや職業紹介事業者等の「紹介」を受けて雇い入れることが要件になっている。一方、キャリアアップ助成金は採用の経路を問わず、すでに雇っている有期・パート社員を正社員にするなどの取り組みで対象になる。自社ホームページや求人媒体、知人紹介で採用した人は前者の対象外になりやすいので、採用前に確認しておきたい。
この記事でわかること
- 紹介経路が要件になる助成金と、ならない助成金の違い
- 自社HP・求人媒体・知人紹介・人材紹介会社それぞれの扱い
- 採用後に「紹介を受けていなかった」と気づいたときの考え方
- 経路でつまずかないための採用前チェックリスト
助成金で「紹介経路」が問われる理由
雇用関係の助成金の多くは、就職が難しい人の雇用機会を広げる目的でつくられている。そのため、国が把握している公的な就職支援の流れに乗って採用されたかどうかを、要件として確認する制度がある。具体的には、ハローワークや、厚生労働大臣が許可・届出を受理した民間の職業紹介事業者から紹介を受けて雇い入れたかどうかが見られる。
ここで大切なのは、「求人を出した場所」ではなく「応募者が紹介を受けたか」が問われるという点だ。ハローワークに求人を出していても、応募者が別の経路で来て雇った場合は、紹介を受けたことにならないことがある。逆に、民間の職業紹介事業者でも、許可・届出のあるところなら紹介要件を満たせる場合がある。個別の判断は、年度ごとに改定される支給要領で確認が必要だ。
紹介経路が要件になる制度の特徴
紹介経路が問われる制度には、次のような共通点がある。
- 対象者が「就職が難しい人」と位置づけられている(高齢者、障害者、母子家庭の母、長期失業者など)
- 雇入れ前に公的機関が対象者かどうかを判断する
- 雇入れ日より前に紹介を受けている必要がある
最後の点が特に落とし穴になる。採用を決めて雇用契約を結んでから紹介状を取っても、遅すぎる扱いになる制度がある。
制度別|紹介経路の要件の有無
主な雇用関係の助成金について、紹介経路の扱いを整理した。表は目安であり、実際の要件は年度の支給要領で必ず確認してほしい。
| 制度 | 紹介経路の要件 | 対象になる採用の形 |
|---|---|---|
| トライアル雇用助成金(一般トライアルコース等) | あり(ハローワーク、地方運輸局、許可・届出のある職業紹介事業者等の紹介) | 紹介を受けた対象者を試行的に雇い入れる |
| 特定求職者雇用開発助成金 | あり(ハローワーク等の紹介による雇入れ) | 高齢者・障害者などの対象者を継続して雇用する |
| キャリアアップ助成金 | なし(採用経路は問われない) | すでに雇用している有期・パート社員の正社員化、賃金規定の改定など |
| 業務改善助成金 | なし | 事業場内最低賃金の引上げと設備投資 |
| 人材開発支援助成金 | なし | 従業員への訓練の実施 |
雇い入れた人数ではなく、どの制度を狙うかによって、採用経路の自由度が決まると考えるとわかりやすい。詳しい制度の中身は、トライアル雇用助成金の申請方法や特定求職者雇用開発助成金の解説で確認できる。
採用経路別|助成金の扱い
実際の採用現場でよくある経路ごとに、紹介要件のある制度(トライアル雇用・特定求職者)がどう扱われるかをまとめる。
| 採用経路 | 紹介要件のある制度 | 補足 |
|---|---|---|
| ハローワークの紹介 | 対象になり得る | 紹介状の交付を受け、雇入れ日より前に紹介を受けていることが基本 |
| 自社ホームページ・SNS経由の応募 | 原則対象外 | 応募後にハローワークへ回しても、紹介とは認められにくい |
| 民間の求人媒体(求人サイト・求人誌) | 原則対象外 | 求人媒体は職業紹介ではなく、広告の掲載にあたる |
| 知人・従業員の紹介(リファラル) | 原則対象外 | 個人間の紹介は公的な職業紹介ではない |
| 許可・届出のある職業紹介事業者 | 対象になり得る | 制度により要件が異なるため確認が必要。紹介手数料との関係も要注意 |
| 学校・大学の求人(新卒) | 制度による | 新卒は対象外とされる制度が多い |
求人媒体は「職業紹介」ではなく「広告」という扱いなので、紹介要件には当てはまらない点を押さえておきたい。
自社ホームページや求人媒体で採用した場合
自社HPや求人媒体で応募を集めた人は、トライアル雇用や特定求職者の助成金には原則使えない。応募者が助成金の対象になるタイプの人であっても同じだ。たとえば高齢の求職者や障害のある求職者でも、紹介を受けずに直接応募して採用されたなら、紹介要件を満たさない。
ここで次のようなやり方を考える人がいるが、避けたほうがよい。
- 採用を決めた後で、形式だけハローワークに紹介状を出してもらう
- 雇入れ後に求人をハローワークに出して、紹介があったように整える
これらは事実と異なる申請になる恐れがあり、不正受給と判断されるリスクがある。不正受給の扱いは助成金の不正受給と判断されたらどうなる?で詳しく解説している。経路は事実どおりに申告するのが基本だ。
知人・リファラルで採用した場合
知人や社員の紹介で採用した場合も、紹介要件のある助成金は原則使えない。ただし、採用後の働かせ方によっては、別の制度が候補になる。たとえば、最初は有期契約で雇い、その後に正社員へ転換するなら、採用経路を問わないキャリアアップ助成金の正社員化の取り組みを検討できる。
人材紹介会社を使った場合
許可・届出のある職業紹介事業者の紹介は、制度によっては紹介要件を満たす。ただし、紹介手数料が高額になるケースでは、助成金の額と相殺して実質のメリットがなくなることもある。この点は人材紹介を使うと助成金は減る?で整理しているので、あわせて見てほしい。
採用経路を問わない助成金の考え方
紹介経路が合わなかったとしても、助成金を諦める必要はない。採用経路を問わず使える制度は複数ある。
- キャリアアップ助成金:有期雇用の社員を正社員にする、賃金規定を改定して賃上げする、といった取り組みが対象。キャリアアップ助成金の全体像で、コースごとの違いを確認できる。
- 業務改善助成金:最低賃金の引上げと設備投資を組み合わせる制度で、採用経路は関係しない。
- 人材開発支援助成金:採用した人に訓練を受けさせる場合に検討できる。
つまり、採用で使える制度と、採用後の育成・処遇改善で使える制度は別のレーンにある。採用経路で一つの制度が使えなくなっても、別のレーンの制度で補える可能性がある。
採用前に決めておきたい順番
助成金を前提に採用するなら、次の順番で進めるとつまずきにくい。
- 1. どの制度を使うかを先に決める
- 2. 紹介要件があるかを支給要領で確認する
- 3. 要件があるなら、ハローワーク等への求人登録と紹介を先に済ませる
- 4. 紹介を受けた後に、雇用契約を結ぶ
- 5. 採用経路や日付がわかる書類(紹介状の写し、求人票など)を保管する
雇用契約を結んだ日より前に紹介を受けていることが、多くの制度で求められる。採用の順番を逆にすると取り戻せない。
紹介を受けずに採用してしまった場合の対処
すでに紹介を受けずに採用した場合は、次のように整理する。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| トライアル雇用・特定求職者の対象にしたかった | 紹介要件を満たせないため、原則対象外。無理に整えない |
| 採用済みの人を正社員にしたい | 採用経路は問われないキャリアアップ助成金を検討 |
| 賃上げや設備投資も予定している | 業務改善助成金など、経路を問わない制度を併用検討 |
| 今後も採用予定がある | 次回の採用から、ハローワーク等の紹介を先に受ける運用に変える |
なお、どの制度でも「採用日より前に計画や届出が必要」という手順の縛りがある。手順の見落としについては助成金がもらえない・不支給になる理由TOP10にもまとまっている。
よくある誤解
「ハローワークに求人を出せば必ず対象になる」は誤解。 求人を出しても、応募者が紹介状を持って来なければ紹介要件を満たさない。応募者本人が対象者の条件を満たしているかも、あわせて確認される。
「求人媒体で採用した人は、どの助成金も使えない」も誤解。 紹介要件のない制度なら、採用経路は関係なく使える。
「紹介会社を使えば全部対象になる」とも限らない。 事業者の許可・届出の有無や、制度ごとの要件で扱いが変わる。
FAQ
Q1. 自社ホームページで採用した高齢の人は、特定求職者雇用開発助成金の対象になりますか?
A. 紹介を受けていない場合は、原則として対象外になる。対象者の年齢条件を満たしていても、ハローワーク等の紹介が別の要件として問われるためだ。
Q2. 雇用契約を結んだ後にハローワークで紹介状をもらえば間に合いますか?
A. 多くの制度では、雇入れより前の紹介が前提になる。後から整える形は認められにくく、事実と異なる申請になるおそれもある。
Q3. 求人媒体で募集した場合、助成金はまったく使えませんか?
A. 使えない制度が多いのは、トライアル雇用や特定求職者のように紹介要件がある制度だ。採用後にキャリアアップ助成金などを使う道は残っている。
Q4. 民間の人材紹介会社の紹介でも、紹介要件を満たせますか?
A. 許可・届出のある事業者の紹介であれば、満たせる制度がある。ただし制度ごとに扱いが違うので、支給要領の確認が必要だ。
Q5. どの制度が使えるか自社で判断できません。
A. 採用経路の要件は、年度で変わることもある。判断に迷う場合は、社会保険労務士など助成金の専門家に相談する選択肢がある。
まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を
ハローワーク以外の採用でも助成金は使えるが、トライアル雇用や特定求職者は紹介要件があり、自社HP・求人媒体・知人紹介では原則対象外になる。キャリアアップ助成金など経路を問わない制度もあるため、採用前に制度ごとの要件を確認し、順番を間違えないことが大切だ。判断に迷うときは、専門家に依頼する選択肢もある。
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