事業承継・引継ぎ補助金は中小企業庁が所管する公式の支援制度で、2026年度もM&Aによる引継ぎで最大800万円、後継者への承継後の新規事業でも最大600万円の補助が受けられる見込みです。本記事では中小企業庁の公募要領に基づき、3つのコースの補助内容・補助上限額・申請手順を一次情報として整理し、後継者不足やM&Aを検討する経営者に向けて徹底解説します。
事業承継・引継ぎ補助金とは?制度の全体像
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業庁が所管する補助金制度です。後継者問題を抱える中小企業が、事業承継やM&Aを円滑に進め、事業の継続・発展を図るために必要な費用の一部を補助します。
制度が創設された背景
日本では今後10年間で70歳以上を迎える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人存在し、そのうち半数以上が後継者未定とされています。貴重な技術・ノウハウ・雇用を守るため、国が主導してM&Aや事業引き継ぎを支援する体制が整備されています。
2026年度の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主管省庁 | 中小企業庁 |
| 補助対象 | 事業承継・M&Aに要する費用 |
| 補助率 | 1/2〜2/3 |
| 補助上限額 | 最大800万円(コースにより異なる) |
| 対象者 | 中小企業・小規模事業者 |
| 申請方法 | 電子申請(Jグランツ) |
事業承継税制との違い|補助金と税制優遇はどう使い分けるか
事業承継を検討する際によく比較されるのが「事業承継・引継ぎ補助金」と「事業承継税制(法人版・個人版)」です。名前が似ているため混同されがちですが、目的も仕組みも異なります。
| 制度 | 仕組み | 主な対象 |
|---|---|---|
| 事業承継・引継ぎ補助金 | 承継・M&Aに要した費用の一部を現金で補助 | 設備投資・M&A仲介手数料・広告費等 |
| 事業承継税制 | 自社株式や事業用資産の承継にかかる相続税・贈与税の納税を猶予・免除 | 非上場株式・個人事業の事業用資産 |
事業承継・引継ぎ補助金が「承継後の投資費用」を支援するのに対し、事業承継税制は「株式や資産を引き継ぐ際の税負担」を軽減する制度です。対象となる費用が異なるため、多くの場合は両方を併用できます。株式の承継は税理士、補助金の申請はJグランツを通じた別窓口の手続きになるため、事業承継を計画する際はこの2つを分けて準備を進めるのが実務上のポイントです。
公式情報の探し方と2026年度の公募スケジュール
「事業承継・引継ぎ補助金 公式」を探している方向けに、一次情報の確認先を整理します。信頼できる情報源は主に以下の3つです。
| 情報源 | 確認できる内容 |
|---|---|
| 中小企業庁ウェブサイト | 制度の全体概要、関連施策とのつながり |
| 事業承継・引継ぎ補助金事務局サイト | 公募要領(最新版)、公募回次ごとのスケジュール、様式集 |
| Jグランツ(電子申請システム) | 実際の申請受付、GビズIDの取得案内 |
事業承継・引継ぎ補助金は、例年年に複数回(2〜4回程度)に分けて公募が実施されます。公募ごとに補助率・上限額・要件の細部が見直されることがあるため、申請を検討する際は必ず直近の公募回の公募要領(最新版のPDF)を確認することが重要です。公募開始から締切までの期間は1〜2ヶ月程度と短いため、事業計画書の準備は公募開始前から進めておくのが実務上のポイントです。
3つのコースと補助内容
事業承継・引継ぎ補助金には、目的・状況に応じた3つのコースが設けられています。
コース1:経営革新
事業承継後の新たな取り組み(新商品開発・新サービス展開・海外展開等)を支援するコースです。
| 区分 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 補助事業者(承継者) | 2/3 | 600万円 |
| 廃業・再チャレンジ(旧事業者) | 2/3 | 150万円 |
補助対象費用:
- 設備費(機械装置・工具等)
- 店舗等借入費
- 人件費
- マーケティング調査費
- 広告宣伝費・販売促進費
- 廃業費(廃業・清算に係る費用)
コース2:専門家活用
M&Aを実施する際に、M&AアドバイザーやFAなどの専門家に支払う費用を補助するコースです。
| 区分 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| M&Aにより事業を引き継ぐ者(買い手) | 1/2 | 400万円 |
| M&Aにより事業を引き渡す者(売り手) | 2/3 | 400万円 |
補助対象費用:
- M&A仲介手数料
- FAフィー(ファイナンシャルアドバイザー費用)
- デューデリジェンス費用(財務・法務・税務DD)
- PMI関連費用(統合後の管理コスト)
コース3:廃業・再チャレンジ
事業承継が困難な場合に廃業を選択し、その後新たな事業に再チャレンジする経営者を支援するコースです。
| 区分 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 廃業後に再チャレンジ | 2/3 | 150万円 |
申請対象者と受給要件
対象となる事業者
- 中小企業基本法上の中小企業者
- 小規模事業者
- 特定非営利活動法人(NPO法人)も一部対象
コース別の主な要件
経営革新コース:
- 事業承継を行った日(登記変更日・株式譲渡日など)から5年以内であること
- 承継後の経営革新計画が具体的であること
専門家活用コース:
- 登録M&A支援機関が関与するM&Aであること
- 最終的にM&Aが成立すること(不成立の場合は補助対象外)
廃業・再チャレンジコース:
- 現事業を廃業し、新たな事業に再チャレンジすること
- 廃業計画の実現可能性が認められること
申請手順と必要書類
ステップ1:公募期間の確認と準備
事業承継・引継ぎ補助金は年に複数回公募が行われます。中小企業庁のウェブサイトや事業承継・引継ぎ支援センターで最新情報を確認しましょう。
ステップ2:事業計画書の作成
補助金申請の核となる「事業計画書」を作成します。審査はこの計画書の質によって大きく左右されます。
事業計画書に含めるべき内容:
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 現状分析 | 事業の現状・課題・承継の背景 |
| 承継の概要 | 承継のスキーム・スケジュール |
| 経営革新の内容 | 新たな取り組みの具体的な内容 |
| 収支計画 | 5年間の売上・費用・利益予測 |
| 実施体制 | 人員配置・外部専門家の活用 |
ステップ3:電子申請(Jグランツ)
GビズIDを取得し、Jグランツを通じてオンライン申請を行います。
必要書類:
- 申請書(所定様式)
- 事業計画書
- 決算書(直近2期分)
- 登記事項証明書
- 事業承継を証明する書類(株式譲渡契約書等の写し)
- 専門家活用コースの場合:M&A仲介契約書等
ステップ4:採択後の事業実施
採択通知後、交付申請を行い、交付決定を受けてから補助対象事業を実施します。
ステップ5:実績報告・精算
事業終了後、実績報告書を提出し、審査を経て補助金が確定・入金されます。
M&Aを成功させるための専門家選びのポイント
専門家活用コースを利用する際は、登録M&A支援機関の中から適切な専門家を選ぶことが重要です。
登録M&A支援機関の種類
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| M&A仲介会社 | 売り手・買い手双方の仲介。規模の大きい案件に強い |
| FA(財務アドバイザー) | 売り手または買い手のみをサポート。利益相反が少ない |
| 金融機関(銀行・信金) | 地域密着型。融資との連携が強み |
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 公的機関。無料でマッチングを支援 |
費用の相場と注意点
M&A仲介費用は成約額の3〜5%が目安ですが、小規模なM&Aでは最低手数料として200〜500万円が設定されているケースもあります。補助金でカバーできる上限を意識しながら、複数の機関から見積もりを取ることをお勧めします。
事業承継・引継ぎ補助金活用の成功事例
製造業の例
50代の経営者が後継者のいない自社を60代のベテラン技術者(M&A経由)に引き継いだケース。専門家活用コースで FA 費用の2/3(約260万円)が補助され、円滑な引き継ぎを実現。
飲食業の例
地方の老舗飲食店が事業承継後、経営革新コースを活用してオンライン販売に進出。補助金で EC サイト構築費・広告費の2/3(約400万円)を受給し、売上を1.5倍に拡大。
小売業の例
廃業を検討していた雑貨店オーナーが廃業・再チャレンジコースを活用。廃業費用の補助を受けつつ、新たにコンサルティング業として再スタート。
不採択だった場合の見直しポイントと再申請
事業承継・引継ぎ補助金は人気の高い制度のため、公募回によっては不採択になるケースもあります。不採択となった場合でも、多くは次回以降の公募回に再申請が可能です。
よくある不採択の理由
- 事業計画書の収支計画に具体性が乏しい(売上予測の根拠が不明確)
- 承継後の経営革新の内容が既存事業の延長にとどまり、新規性が弱い
- 補助対象経費と補助対象外経費の区分が曖昧
再申請前に見直すべきポイント
再申請にあたっては、審査結果のフィードバック(開示される場合)を踏まえ、収支計画の根拠データを補強する、経営革新の具体策を数値目標とともに明確化するなど、事業計画書の質を一段階引き上げることが重要です。事業承継・引継ぎ支援センターや専門家に事前レビューを依頼するのも有効な方法です。
事業承継・引継ぎ補助金に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 事業承継・引継ぎ補助金の公式情報はどこで確認できますか?
中小企業庁のウェブサイト、および事業承継・引継ぎ補助金事務局が運営する公式サイトで最新の公募要領・スケジュールが公開されています。申請はJグランツ(電子申請システム)経由で行います。
Q2. 事業承継・引継ぎ補助金は年に何回公募されますか?
例年、複数回(2〜4回程度)に分けて公募が実施されます。公募ごとに要件や予算配分が見直されることがあるため、最新の公募要領を都度確認することが重要です。
Q3. 個人事業主でも申請できますか?
はい。中小企業基本法上の小規模事業者・個人事業主も対象に含まれます。ただし、コースごとに定められた要件(承継後の年数等)を満たす必要があります。
Q4. 補助金と融資(借入)はどちらを先に検討すべきですか?
補助金は返済不要な資金である一方、採択されるまで時間がかかり、原則として後払い(精算払い)です。当面の資金繰りには融資、投資回収を見据えた事業拡大には補助金、というように役割分担して検討するのが一般的です。
Q5. 事業承継・引継ぎ補助金と他の補助金は併用できますか?
原則として、同一の経費に対して複数の補助金を重複して受給することはできません。ただし対象経費が異なれば、ものづくり補助金など他制度との併用が可能なケースもあります。詳細は事務局または専門家に確認することをおすすめします。
Q6. 事業承継税制と事業承継・引継ぎ補助金は同時に使えますか?
対象となる費用が異なるため、多くの場合は併用が可能です。事業承継税制は株式・事業用資産の承継にかかる税負担の猶予・免除、事業承継・引継ぎ補助金は承継やM&Aに要した費用への現金補助という違いがあります。併用を検討する場合は税理士とM&A専門家の双方に早めに相談することをおすすめします。
Q7. 不採択だった場合、次の公募回に再申請できますか?
可能です。不採択の主な理由は事業計画書の具体性不足であることが多いため、収支計画の根拠を補強し、経営革新の内容をより具体的に記載したうえで再申請するケースが一般的です。
Q8. 補助金はいつ入金されますか?
採択・交付決定後に事業を実施し、事業終了後に実績報告書を提出して審査を受けます。補助金は原則としてこの実績報告後の後払い(精算払い)となるため、事業実施中の費用は自己資金や融資で立て替える必要があります。
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事業承継・引継ぎ補助金は、後継者不足やM&Aを検討する中小企業経営者にとって強力な支援ツールです。2026年度も最大800万円の補助が見込まれており、M&A費用や承継後の新規事業投資を大幅に抑えることができます。事業承継は一生に一度の重大な決断だからこそ、早めに専門家に相談し、最適な資金調達計画を立てることが重要です。
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