障害者雇用納付金制度は、法定雇用率を満たさない事業主から納付金を徴収し、雇用率を上回る事業主に調整金・報奨金を支給する仕組みです。この制度と、キャリアアップ助成金や人材確保等支援助成金といった雇用関係助成金は財源も申請窓口も異なる別制度ですが、どちらも「障害者雇用の促進」という目的でつながっており、併用できる場面があります。本記事では納付金・調整金・報奨金の違いと、助成金との関係を整理します。
障害者雇用納付金制度とは
障害者雇用納付金制度は、障害者の雇用に伴う事業主間の経済的負担を調整するために設けられた制度で、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営しています。企業には「障害者雇用促進法」によって一定割合以上の障害者を雇用する義務(法定雇用率)が課されており、この義務を果たしていない常用雇用労働者100人超の事業主から納付金を徴収し、義務を上回って雇用している事業主に調整金・報奨金として還元する仕組みになっています。
つまりこの制度は「助成金」のように国から一方的に支給されるものではなく、事業主同士の負担を調整する保険的な仕組みという点が大きな特徴です。
法定雇用率の基本
法定雇用率は障害者雇用促進法に基づき定期的に見直されます。民間企業・国や地方公共団体・教育委員会でそれぞれ異なる率が設定されており、直近でも段階的な引き上げが行われています。自社の法定雇用率・雇用義務人数は、必ず厚生労働省またはハローワークが公表する最新の情報で確認してください。
納付金・調整金・報奨金の違い
障害者雇用納付金制度には、負担側の「納付金」と、受給側の「調整金」「報奨金」があります。この3つは対象となる企業規模や算定基準が異なるため、混同しないよう整理しておく必要があります。
| 項目 | 納付金 | 調整金 | 報奨金 |
|---|---|---|---|
| 対象事業主 | 常用雇用労働者100人超で法定雇用率未達成 | 常用雇用労働者100人超で法定雇用率達成 | 常用雇用労働者100人以下で一定数以上雇用 |
| 性質 | 徴収(支払い義務) | 支給 | 支給 |
| 算定の考え方 | 不足人数に応じた金額を徴収 | 超過人数に応じた金額を支給 | 一定の基準を超えた人数分を支給 |
| 運営主体 | JEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構) | JEED | JEED |
金額の単価や算定基準は制度改正で変更されることがあるため、具体的な金額はJEEDの最新の公表資料で必ず確認してください。
助成金との関係性
障害者雇用納付金制度そのものは前述のとおり「事業主間の負担調整」の仕組みですが、これとは別に、障害者雇用の促進を目的とした複数の助成金が存在します。代表的なものが以下です。
| 助成金名 | 主な目的 | 財源・窓口の系統 |
|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金(障害者関連コース) | 障害者等の雇入れを行う事業主への助成 | 雇用保険二事業(ハローワーク経由) |
| 障害者作業施設設置等助成金 | 作業施設・設備の整備費用の助成 | 障害者雇用納付金制度に基づく助成金(JEED) |
| 障害者福祉施設設置等助成金 | 福祉施設等の整備費用の助成 | 障害者雇用納付金制度に基づく助成金(JEED) |
| 職場適応援助者(ジョブコーチ)助成金 | 職場定着支援の費用助成 | 障害者雇用納付金制度に基づく助成金(JEED) |
ここで重要なのは、「調整金・報奨金」と「作業施設設置等助成金などJEEDが運営する助成金」は、いずれも障害者雇用納付金制度の枠組みの中にある制度だという点です。一方で、特定求職者雇用開発助成金のように、財源が雇用保険二事業でハローワークが窓口となる助成金は、納付金制度とは別の制度です。同じ「障害者雇用の助成金」という括りでも、運営主体・財源・申請窓口が異なるため、自社がどの制度の対象になり得るかを個別に確認する必要があります。
併用は可能か
納付金の納付や調整金・報奨金の受給と、雇用関係助成金の受給は、原則として制度上の直接的な排他関係にはありません。ただし、助成金ごとに個別の支給要件(雇入れ日・雇用形態・支給対象期間など)が定められているため、自社の状況でどの制度をどう組み合わせられるかは、個別のケースで判断が必要です。
手続きの流れ
- 1. 自社の常用雇用労働者数・障害者雇用率を算定し、対象となる制度(納付金/調整金/報奨金)を確認する
- 2. 該当する場合はJEEDの様式で申告・申請を行う(申告期間は毎年度定められている)
- 3. 障害者雇用に伴う設備投資や人員配置を行った場合は、対象となる助成金(作業施設設置等助成金など)の要件を確認する
- 4. 雇入れに関する助成金(特定求職者雇用開発助成金等)は、ハローワークでの求人手続きを含む一連の要件を満たしているか確認する
- 5. 必要書類を揃えて期限内に申告・申請する
障害者雇用に関する制度は、納付金制度側の申告と雇用保険二事業側の助成金申請とで窓口・様式・スケジュールがそれぞれ異なるため、社内で複数の制度を横断的に把握し、期限管理を行う体制が求められます。人事・労務の担当者が少ない企業では、この管理が負担になりやすい領域でもあります。
制度活用でつまずきやすいポイント
- 常用雇用労働者数のカウント方法を誤り、対象・非対象の判定を誤る
- 申告・申請の期限を過ぎてしまう
- 複数の助成金・制度の要件を混同し、本来受給できる制度を見落とす
- 制度改正(法定雇用率の引き上げ等)の反映が社内規程・算定に間に合わない
こうした点は、障害者雇用に関する助成金・納付金制度の実務に詳しい社会保険労務士など専門家に相談することで、見落としを防ぎやすくなります。特に複数拠点を持つ企業や、雇用保険二事業系の助成金と納付金制度系の助成金を両方視野に入れたい企業では、制度全体を横断して整理してくれる専門家の存在が有効です。
なお、本記事で紹介した制度の対象条件・金額・申告期限は改正される可能性があるため、実際の申告・申請にあたっては必ずJEEDおよび厚生労働省が公表する最新の情報・支給要領で確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 障害者雇用納付金制度と助成金は同じ制度ですか?
A. いいえ、別の制度です。納付金制度は事業主間の負担を調整する仕組みで、JEEDが運営する作業施設設置等助成金などはこの枠組みの中にありますが、特定求職者雇用開発助成金のように雇用保険二事業を財源とする助成金は別の制度です。
Q2. 常用雇用労働者100人以下の企業は納付金を払う必要がありますか?
A. 納付金の対象は常用雇用労働者100人超の事業主です。100人以下の事業主は納付金の対象外ですが、一定数以上の障害者を雇用している場合は報奨金の対象になり得ます。
Q3. 調整金・報奨金の受給と雇用関係助成金の受給は同時にできますか?
A. 制度上の直接的な排他関係は原則ありませんが、助成金ごとに個別の支給要件があるため、自社の状況に応じて個別に確認する必要があります。
Q4. 法定雇用率はどこで確認できますか?
A. 厚生労働省やハローワークが公表する最新の情報で確認できます。法定雇用率は制度改正で見直されることがあるため、都度最新情報を確認してください。
Q5. 制度の申告・申請を自社だけで行うのが不安な場合はどうすればよいですか?
A. 障害者雇用関連の制度に詳しい社会保険労務士など専門家に相談することで、対象判定や申告・申請の実務をサポートしてもらえます。
まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を
障害者雇用納付金制度は「納付金・調整金・報奨金」からなる事業主間の負担調整の仕組みであり、JEEDが運営する作業施設設置等助成金などはこの枠組みに含まれますが、雇用保険二事業を財源とする助成金は別制度です。制度ごとに窓口・要件・期限が異なるため、自社がどの制度の対象になるかを正確に把握することが重要です。
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