助成金申請と36協定・労使協定の関係【2026年版】|未提出だと不支給になる理由と整備手順

助成金申請と36協定・労使協定の関係【2026年版】 申請手続き・税務ガイド

助成金の申請でつまずく理由は、実は「制度の中身」よりも「労務管理の基本」にあることが少なくありません。とくに多くの雇用関係助成金は、支給要件の中に「労働関係法令を遵守していること」という一文を必ず含んでおり、その代表格が36協定(サブロク協定)と各種労使協定です。時間外労働をさせているのに36協定を届け出ていない、あるいは変形労働時間制を導入しているのに労使協定を締結・届出していない――こうした状態のまま助成金を申請すると、審査の段階で不支給と判定されるケースが実際に発生しています。本記事では、36協定と労使協定が助成金審査でどう見られるのか、なぜ未整備だと不支給になるのか、そして申請前に何を整えればよいのかを、2026年8月時点の情報にもとづいて解説します。

助成金の支給要件に「労働関係法令の遵守」が入っている理由

雇用関係助成金の多くは、雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)の財源から支給されています。国が労働者の雇用の安定や能力開発を目的に企業を支援する制度である以上、そもそも労働基準法や労働契約法などの労働関係法令を守っていない企業を支援対象にすることは制度趣旨と矛盾します。そのため、多くの助成金の支給要領には「支給申請日の前日から起算して6ヶ月前の日から支給決定日までの間に、労働関係法令の違反を行っていないこと」といった趣旨の共通要件が置かれています。

36協定や労使協定の未整備は、この「労働関係法令違反」に直結しやすい典型例です。時間外労働をさせているのに36協定がない状態は労働基準法32条・36条違反となり、変形労働時間制を届出なしで運用している場合も同様です。助成金の審査担当者は、支給申請の際に就業規則や36協定届の提出を求めることが多く、そこで不備が発覚すると「労働関係法令違反」として不支給になる、あるいは是正を求められて審査が長期化する、という流れになります。

労働関係法令遵守が求められる主な助成金の傾向を整理すると、以下のようになります。

助成金の種類 36協定・労使協定が問われやすい場面
キャリアアップ助成金 転換後の労働条件・残業実態の確認時に36協定の有無を確認されることがある
業務改善助成金 賃上げ計画と合わせて、時間外労働の管理体制が審査対象になりやすい
人材開発支援助成金 研修時間の扱いと通常業務の残業実態の整合性が見られる
働き方改革推進支援助成金 そもそも労働時間管理の適正化がテーマのため、36協定の整備状況が前提となる
両立支援等助成金 育児介護休業に関する労使協定の有無が確認される

36協定の基礎知識|届出義務と上限規制のおさらい

36協定とは、労働基準法36条に基づき、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働者を働かせる場合、または法定休日に労働させる場合に、事業場の過半数労働組合または過半数代表者と使用者との間で締結し、所轄の労働基準監督署に届け出る協定です。届出をして初めて効力が発生する点が重要で、締結しただけで届出をしていない状態は法的に無効です。

2019年の働き方改革関連法により、36協定の時間外労働には罰則付きの上限が設けられています。

  • 原則:月45時間・年360時間まで
  • 特別条項を設ける場合:年720時間以内、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、原則の月45時間を超えられるのは年6ヶ月まで

特別条項付き36協定を締結する場合は、臨時的な特別の事情を具体的に記載する必要があり、「業務の都合上必要なとき」といった抽象的な理由では労働基準監督署から補正を求められることがあります。助成金の審査でも、特別条項の内容が形骸化していないかという観点で確認されることがあるため、実態に即した記載が求められます。

36協定未届のまま残業させていると不支給になる典型パターン

現場でよくあるのが、「36協定を締結したつもりで、届出を忘れている」パターンです。労働基準監督署への届出は郵送・持参・電子申請のいずれかで行いますが、担当者の異動や引き継ぎ漏れによって、有効期限が切れた36協定のまま運用が続いているケースも見られます。36協定には原則1年間の有効期間があり、期限が切れれば再締結・再届出が必要です。

助成金の支給申請時には、直近の残業実態と36協定の有効期間が突き合わされることがあり、ここにズレがあると「時間外労働に関する労働基準法違反」として扱われ、不支給決定につながります。とくにキャリアアップ助成金や人材確保等支援助成金のように、対象労働者の労働条件を審査するタイプの助成金では、賃金台帳やタイムカードの残業時間と36協定の届出内容の整合性が重視される傾向があります。助成金がもらえない・不支給になる理由TOP10でも触れられている通り、労務管理の初歩的な不備は不支給理由の上位に挙がりやすい項目です。

助成金ごとに必要になる主な労使協定

36協定以外にも、労働基準法や育児介護休業法にもとづく労使協定は複数あり、導入している制度によって必要な協定が変わります。助成金の種類によっては、これらの協定の締結・整備状況そのものが加点や要件確認の対象になることもあります。

労使協定の種類 必要になる場面 労働基準監督署への届出
36協定(時間外・休日労働) 法定労働時間を超えて残業させる場合 必要
時間単位年休に関する労使協定 年次有給休暇を時間単位で付与する場合 不要(就業規則との整合は必要)
賃金控除に関する労使協定 給与から法定控除以外を天引きする場合 不要
1年単位・1ヶ月単位の変形労働時間制に関する協定 シフト制などで所定労働時間を変形させる場合 必要(1年単位の場合)
専門業務型裁量労働制に関する労使協定 対象業務の労働者を裁量労働制にする場合 必要
育児・介護休業に関する労使協定 入社1年未満の労働者等を対象外とする場合など 不要
フレックスタイム制に関する労使協定 清算期間1ヶ月超のフレックスを導入する場合 必要(清算期間1ヶ月超の場合)

両立支援等助成金のように育児・介護休業の取得実績を評価する助成金では、育児介護休業規程と労使協定の内容に矛盾がないかが確認されます。両立支援等助成金の申請方法で必要書類を確認しつつ、社内規程との整合を早めにチェックしておくとスムーズです。

見落としがちな落とし穴|過半数代表者の選出手続き不備

36協定や労使協定が「締結・届出はされているのに無効」と判断される最大の原因が、過半数代表者の選出手続きの不備です。労働基準法施行規則では、過半数代表者は「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」「投票、挙手等の方法による手続きで選出すること」が求められています。よくある不備は次のようなものです。

  • 使用者(社長・人事担当者)が代表者を指名している
  • 選出方法(投票・挙手・持ち回りの署名など)を記録に残していない
  • 管理監督者を過半数代表者に選んでいる
  • 従業員数の集計対象(パート・アルバイト含む全労働者)を誤っている

これらは労働基準監督署の是正勧告の対象になるだけでなく、助成金審査でも「有効な労使協定とは認められない」として不支給の理由になり得ます。選出の記録(候補者への周知方法、投票用紙や挙手の記録、選出結果の通知)は最低でも直近分を保管しておくことが望ましいでしょう。

整備の手順とタイムライン

助成金の申請を予定している場合、逆算して次のような手順で整備を進めるのが実務的です。

  1. 1. 現状の労働時間管理を確認(1週間程度):タイムカードや勤怠システムのデータで実際の残業実態を洗い出す
  2. 2. 必要な労使協定の洗い出し(1週間程度):変形労働時間制・裁量労働制・時間単位年休など、導入している制度を棚卸し
  3. 3. 過半数代表者の適正な選出(1〜2週間):投票または挙手による選出と記録の作成
  4. 4. 協定書の作成・締結(1週間程度):様式に沿って協定内容を明文化
  5. 5. 労働基準監督署への届出(36協定・変形労働時間制など届出が必要なもの)
  6. 6. 就業規則との整合性チェック:協定内容と就業規則に矛盾がないか確認
  7. 7. 助成金申請の準備開始

全体でおおむね1〜1.5ヶ月を見ておくと、余裕を持って申請準備に進めます。助成金の申請窓口はどこ?労働局・ハローワーク・自治体の役割の違いも参考に、届出先の役割分担を把握しておくと動きやすくなります。

助成金申請前セルフチェックリスト

申請直前に自社で確認できる簡易チェックリストです。

チェック項目 確認できていればチェック
時間外労働をさせている労働者がいる場合、36協定を届け出ているか
36協定の有効期間が切れていないか
特別条項の上限時間・回数を守っているか
過半数代表者の選出方法を記録に残しているか
変形労働時間制・裁量労働制を使っている場合、労使協定を締結しているか
育児介護休業に関する労使協定と規程の内容が一致しているか
就業規則と各労使協定に矛盾がないか
直近の賃金台帳・タイムカードと36協定の内容が整合しているか

よくある質問(FAQ)

Q1. 残業がほとんどない会社でも36協定は必要ですか?

A. 法定労働時間を1分でも超える時間外労働、または法定休日の労働をさせる可能性がある場合は、実績の多寡にかかわらず36協定の締結・届出が必要とされています。繁忙期のみ残業が発生する会社でも、事前に届け出ておくのが安全です。

Q2. 36協定は一度届け出れば恒久的に有効ですか?

A. いいえ。36協定には有効期間(通常1年間)があり、期限が切れる前に再締結・再届出が必要です。有効期限の管理を怠ると、知らないうちに未届状態になっていることがあります。

Q3. 労使協定の不備は自分たちで是正できますか?

A. 過半数代表者の再選出や協定書の再作成自体は自社で対応可能ですが、労働基準法上の要件を正確に満たす必要があるため、不安がある場合は社会保険労務士に相談するのも一つの方法です。

Q4. 36協定の不備が見つかった場合、助成金の申請はどうなりますか?

A. 不備を是正したうえで申請するのが原則です。是正のタイミングと申請スケジュールによっては、支給要件を満たす時期が後ろ倒しになることもあるため、早めの確認をおすすめします。

Q5. 労使協定の整備状況は誰に確認してもらえますか?

A. 労働基準監督署では届出の受理は行いますが、協定内容が自社の実態に合っているかの相談は、社会保険労務士など専門家に依頼するケースが一般的です。

まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を

36協定・労使協定の未整備は、助成金審査で「労働関係法令違反」とみなされ不支給に直結する典型的な落とし穴です。過半数代表者の選出手続きや協定の有効期限も含めて、申請前に一つずつセルフチェックしておくことがもらい損ねを防ぐ最短ルートといえます。労務管理の整備から助成金の選定・申請まで一括で相談したい場合は、専門家への相談も選択肢になります。

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※本記事の内容は2026年8月時点の情報です。制度の金額・要件は改正される場合がありますので、最新の公募要領・支給要領を労働局・厚生労働省の公式情報で必ずご確認ください。

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