助成金の多くは「事業所単位」で要件を判定するため、本社と支店を一体として扱うか、拠点ごとに個別判定するかで受給可否・受給額が大きく変わることがある。労働保険の適用単位や雇用保険の適用事業所番号がどう設定されているかによって扱いが決まるため、まず自社の事業所区分を正確に把握することが出発点になる。本記事では複数拠点を持つ企業が助成金を申請する際の事業所の考え方を整理する。
助成金における「事業所」とは何か
助成金の多くは雇用保険の適用事業所を単位として要件判定が行われる。ここでいう「事業所」とは、必ずしも法人単位(本社所在地)を指すわけではなく、労働保険関係が成立している場所ごとの単位を指すことが多い。
労働保険(労災保険・雇用保険)は原則として「事業所ごと」に成立させることになっており、本社と各支店・営業所・工場等がそれぞれ独立した事業所として労働保険関係を届け出ているケースと、本社が一括して労働保険関係を管理しているケース(継続事業の一括)がある。この管理形態の違いが、助成金の申請単位に直結する。
事業所単位で判定される助成金の具体例
代表的な助成金の多くは、対象労働者が所属する事業所を基準に要件を判定する。
| 助成金の種類 | 判定単位の考え方 |
|---|---|
| キャリアアップ助成金 | 対象労働者が雇用される事業所単位で就業規則等の要件を判定 |
| 業務改善助成金 | 賃上げを実施する事業場単位で判定(事業場内最低賃金が基準) |
| 人材開発支援助成金 | 研修を実施する事業所単位で計画届を提出 |
| 両立支援等助成金 | 対象労働者が所属する事業所の制度整備状況で判定 |
事業場内最低賃金を要件とする業務改善助成金のように、拠点ごとに最低賃金水準が異なる場合は、どの事業所を対象にするかで申請の組み立て方が大きく変わる。複数拠点で異なる賃金水準を採用している企業は、拠点ごとに個別の申請を検討する必要がある。
本社・支店・複数拠点がある場合の判断ポイント
複数拠点を持つ企業が助成金を検討する際は、次の観点で整理すると判断しやすい。
労働保険の適用形態を確認する
自社が「事業所ごとの労働保険成立」なのか「継続事業の一括」なのかによって、助成金の申請主体・申請単位が変わる。継続事業の一括を行っている場合、複数の支店をまとめて一つの事業所として扱えることがあるが、逆に一括扱いのために拠点ごとの個別事情を反映しにくくなる場合もある。
拠点ごとの就業規則・賃金規定の違いを確認する
本社と支店で就業規則や賃金規定が異なる場合、助成金の要件を満たす拠点と満たさない拠点が混在することがある。全社一律の就業規則を整備しているのか、拠点ごとに個別規定があるのかを事前に棚卸ししておくとよい。
どの拠点の従業員を対象にするか決める
キャリアアップ助成金のように対象労働者ごとに支給される制度では、複数拠点のうちどの拠点の従業員を対象にするかで、申請件数・受給総額が変わる。全拠点で同時に取り組みを進めれば受給額を最大化できる可能性がある一方、管理の手間も比例して増える。
複数拠点企業が申請する際の実務フロー
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| STEP1 | 自社の労働保険適用形態(事業所ごと/一括)を確認する |
| STEP2 | 拠点ごとの就業規則・賃金規定・雇用形態を棚卸しする |
| STEP3 | 対象にしたい助成金の判定単位(事業所単位か法人単位か)を確認する |
| STEP4 | 拠点ごとに個別申請するか、まとめて申請するかを決定する |
| STEP5 | 拠点別に必要書類を収集し、申請スケジュールを管理する |
拠点数が多い企業ほど、書類収集や進捗管理の負担が大きくなる。本社の人事・総務担当者だけで全拠点分を管理しようとすると抜け漏れが発生しやすいため、拠点ごとの担当者を明確にしておくことが望ましい。助成金と補助金それぞれの基本的な制度の違いは、本メディアの助成金と補助金の違いを解説した記事も参考にしてほしい。
グループ会社・複数拠点でよくある失敗
- 継続事業の一括を行っているにもかかわらず、拠点ごとに個別で就業規則の要件を満たしていると誤認する
- 一部拠点だけ賃金規定の整備が遅れ、その拠点の従業員だけ助成金の対象外になる
- 拠点ごとに雇用契約書・出勤簿の様式が異なり、支給申請時の書類不備につながる
- 本社担当者が全拠点の状況を把握しきれず、対象になり得る拠点を見落とす
こうした失敗は、事業所単位の考え方を正確に理解していないことが根本原因になっているケースが多い。制度ごとの申請単位の違いは、本メディアの助成金申請の必要書類を解説した記事でも整理しているので、あわせて確認しておくと理解が深まる。複数拠点・グループ会社での助成金活用は管理項目が多いため、専任チームを設けて対応する専門家に依頼する企業も少なくない。
グループ会社・持株会社体制の場合の考え方
近年増えているホールディングス体制(持株会社+事業会社)の企業グループでは、法人格が別であるため、原則としてグループ会社ごとに個別の事業所として扱われる。持株会社側で人事機能を集約している場合でも、雇用契約を締結しているのがどの法人かによって、助成金の申請主体が決まる。
グループ内で出向・転籍がある場合は、対象労働者がどの法人・どの事業所に雇用されているかを時点ごとに正確に把握しておく必要がある。出向元と出向先のどちらが助成金の対象になるかは制度によって異なり、判断を誤ると支給申請が受理されないこともある。
新設事業所・移転した事業所の扱い
事業拡大に伴って新しい拠点を開設した場合や、既存拠点を移転した場合は、労働保険の適用事業所としての届出を新たに行う必要がある。届出のタイミングが遅れると、その拠点で行った採用・雇用改善の取り組みが助成金の対象期間から外れてしまうことがある。新拠点の立ち上げを計画している企業は、事業所設置の届出と助成金の活用計画を同時並行で進めることが望ましい。拠点新設時に見落としやすいポイントは、本メディアの助成金の申請でよくある失敗をまとめた記事でも取り上げている。
FAQ|事業所単位の考え方に関するよくある質問
Q1. 本社でまとめて1件だけ申請することはできますか?
A. 制度や労働保険の適用形態によって異なる。継続事業の一括を行っている場合はまとめて申請できることがあるが、事業所ごとに労働保険を成立させている場合は拠点ごとの個別申請が必要になることが多い。
Q2. 支店だけで申請することはできますか?
A. 支店が独立した雇用保険適用事業所として届出されていれば、支店単独での申請が可能な制度もある。まずは支店の労働保険の適用状況を確認する必要がある。
Q3. 拠点によって就業規則が違う場合、どう対応すればいいですか?
A. 対象にしたい拠点の就業規則が要件を満たしているかを個別に確認する。要件を満たしていない拠点がある場合は、就業規則の改定を先に行う必要がある。
Q4. フランチャイズ加盟店の場合、事業所の扱いはどうなりますか?
A. 加盟店が独立した法人・独立した労働保険適用事業所であれば、本部とは別に個別の事業所として扱われるのが一般的だ。本部と加盟店の関係性によって扱いが変わるため、個別に確認が必要になる。
Q5. 複数拠点分をまとめて専門家に依頼することはできますか?
A. 拠点数が多い企業向けに、専任チームで複数拠点・グループ会社を横断的にサポートする体制を整えている専門家もいる。拠点ごとに個別発注するよりも、まとめて依頼した方が管理コストを抑えられるケースが多い。
Q6. 出向中の従業員は出向元・出向先どちらの助成金対象になりますか?
A. 制度によって異なる。雇用契約・賃金支払いの実態がどちらの法人にあるかで判定されることが多く、出向契約の内容を精査したうえで対象法人を確定させる必要がある。判断に迷う場合は、自己判断で処理を進めず、労働局や専門家に事前確認を取ることをおすすめする。
まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を
助成金の多くは事業所単位で要件が判定されるため、本社・支店・複数拠点を持つ企業は、労働保険の適用形態と拠点ごとの就業規則・賃金規定の違いを正確に把握したうえで申請単位を決める必要がある。拠点が増えるほど管理項目も増えるため、事前の棚卸しが受給額を左右する。
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|---|---|---|---|
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