助成金を自社で申請するかコンサルに依頼するかを迷ったとき、多くの担当者は「コンサル費用」だけを見て判断しがちだ。そもそも助成金と補助金では制度の性質や申請の難易度が異なるため、比較の前提として助成金と補助金と給付金の違いを先に押さえておくと、自社申請とコンサル依頼のどちらが適しているかの判断材料が増える。しかし本当に比較すべきは、自社申請にかかる社内工数を金額換算したコストと、コンサル費用を天秤にかけた「実質コスト」である。本記事では、自社申請の工数を時間単位で見積もり、担当者の時給に換算して費用化する方法と、受給額別の損益分岐の考え方を解説する。
「自社申請なら費用がかからないから得」という発想は一見合理的に思えるが、実際には人件費という形でコストが発生しているにすぎない。本記事で紹介する試算方法を使えば、コンサル費用と自社申請コストを同じ土俵で比較できるようになり、感覚的な判断から脱却できる。
自社申請の「見えないコスト」とは
助成金の自社申請は、書類作成費や申請費が直接かからないため一見無料に見える。しかし実際には、担当者の労働時間という形で確実にコストが発生している。この「見えないコスト」を可視化しないまま、コンサル費用の高さだけで依頼を見送るのは判断を誤る原因になる。
自社申請にかかる工数は主に以下の4つの工程に分解できる。
- 制度調査:自社が対象になりうる助成金を探し、要件を読み込む
- 書類整備:就業規則・雇用契約書など、申請要件を満たすための社内文書を整える
- 窓口とのやりとり:労働局・ハローワーク等への問い合わせ、事前相談
- 差戻し対応:書類不備の修正、追加提出への対応
工数見積もり表
各工程にかかる標準的な時間の目安を以下にまとめた。実際には制度の複雑さや社内の書類整備状況によって変動するが、初めて申請する場合の目安として活用できる。
| 工程 | 内容 | 想定時間(初回申請の目安) |
|---|---|---|
| 制度調査 | 対象制度の洗い出し・要件確認・公募要領の読み込み | 8〜15時間 |
| 書類整備 | 就業規則・雇用契約書・賃金台帳等の整備、様式作成 | 15〜30時間 |
| 窓口とのやりとり | 事前相談・電話問い合わせ・提出時の対応 | 5〜10時間 |
| 差戻し対応 | 不備修正・追加資料の準備・再提出 | 5〜20時間(差戻し回数による) |
| 合計 | 33〜75時間 |
初めて助成金を申請する企業の場合、制度への理解不足から差戻しが複数回発生することも珍しくない。助成金「支給申請書」記入例・書き方のような記入例を事前に確認しておくことで、差戻しの回数はある程度抑えられる。
時給換算で「工数コスト」を出す
工数を金額換算するには、担当者の時給(人件費÷労働時間)を掛け合わせるのが基本的な考え方だ。総務・人事担当者の時給を仮に3,000円(年収換算でおおよそ500万円台)とした場合の試算は以下の通りになる。
| 工数(時間) | 時給3,000円換算 | 時給4,000円換算(管理職クラス) |
|---|---|---|
| 33時間(最短ケース) | 99,000円 | 132,000円 |
| 50時間(標準ケース) | 150,000円 | 200,000円 |
| 75時間(差戻し多発ケース) | 225,000円 | 300,000円 |
さらに、担当者がこの工数を本来業務と並行して行う場合、その間に発生する「機会損失」(本来の業務が滞ることによる損失)も加味すべきだが、これは数値化が難しいため、上記の時給換算はあくまで最低限のコストと捉えるのが妥当だ。
たとえば、総務担当者が本来であれば採用活動や労務管理に充てるべき時間を助成金申請に振り向けた場合、その分だけ他の業務が後ろ倒しになる。繁忙期に申請作業が重なると、外部への影響(採用活動の遅延、労務トラブルへの対応遅れなど)が発生するリスクもあり、こうした間接的な損失まで含めると、自社申請の実質コストは時給換算の金額よりもさらに大きくなる可能性がある点は意識しておきたい。
受給額別の損益分岐の考え方
コンサルに依頼する場合の費用と、自社申請の工数コストを比較する際は、想定される受給額の規模によって損益分岐点が変わってくる。
| 想定受給額 | 自社申請の工数コスト目安 | 成果報酬型コンサル(受給額の25%程度) | どちらが有利か |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 15万円前後 | 12.5万円 | ほぼ拮抗。制度理解度で判断 |
| 100万円 | 15〜20万円前後 | 25万円 | 自社申請が工数コスト面でやや有利な場合も |
| 300万円 | 15〜30万円前後(複数制度でも大幅増にはなりにくい) | 75万円 | 工数コストの伸びが緩やかな分、自社申請が有利になりやすい |
| 500万円以上(複数制度の組み合わせ) | 30〜50万円前後 | 125万円以上 | 制度理解と社内リソースがあれば自社申請、複数制度の同時活用や自治体制度まで広げたいなら依頼が現実的 |
ここで重要なのは、成果報酬型の手数料は受給額に比例して増える一方、自社申請の工数は「制度の数が増えても手続きの流れ自体は似ている」ため、比例的には増えにくいという点だ。つまり受給額が大きくなるほど、単純な工数コスト比較では自社申請が有利に見えやすい。
一方で、月額固定型のプランであれば、受給額が大きくなっても手数料自体は変動しない。成果報酬型と月額固定型のどちらが有利かは、想定される受給額の規模によって逆転することもあるため、見積もり時にはあわせて両方の料金体系で試算しておくことをすすめる。
ただし、これはあくまで「同じ精度で自社が制度を発見し、正しく申請できる」ことが前提の試算である。実際には、自社で調査できる範囲は担当者の知識に依存するため、そもそも活用できる制度を見落としているケースが多い。専門家が約40,000件規模の制度からメリットの高い順に提案できる体制と比べると、自社調査だけでは受給機会そのものを取りこぼすリスクがある。
モデルケースで見る工数コストの試算例
抽象的な議論だけでは判断しづらいため、従業員30名規模の企業がキャリアアップ助成金の申請を検討するケースを例に、具体的な試算をしてみる。
| 項目 | 試算内容 |
|---|---|
| 想定受給額 | 240万円(契約社員数名を正社員転換) |
| 自社申請の想定工数 | 制度調査10時間+書類整備25時間+窓口対応7時間+差戻し対応10時間=52時間 |
| 担当者の時給(年収450万円想定) | 約2,700円 |
| 自社申請の工数コスト | 約14万円(52時間×2,700円) |
| 成果報酬型コンサル(25%)の場合 | 60万円 |
| 月額固定型コンサル(申請代行手数料なし)の場合 | 年間契約でも数十万円程度に収まるケースが多い |
このモデルケースでは、単純な工数コストだけを見ると自社申請のほうが安く見える。しかし、初めて申請する企業では差戻し対応が想定より増えるリスクがあり、また「そもそもキャリアアップ助成金以外にも活用できる制度がなかったか」という機会損失は試算に含まれていない。工数コストの試算はあくまで判断材料のひとつであり、受給機会の取りこぼしリスクとあわせて総合的に検討する必要がある。
自社でやるべきケース・依頼すべきケースの切り分け
以下の基準を目安に、自社申請とコンサル依頼のどちらが適しているかを判断できる。
自社申請が向いているケース
- 総務・人事担当者に助成金申請の経験がある、または学習に時間をかけられる
- 対象となる制度が1〜2件と限定的で、要件もシンプル
- 就業規則・雇用契約書など、申請の土台となる書類がすでに整備されている
- 助成金申請の社内体制を構築できるだけの人員に余裕がある
コンサル依頼が向いているケース
- 「どの制度が使えるか」自体がわからない、制度調査から始める必要がある
- 国だけでなく自治体独自の助成金まで幅広く検討したい
- 担当者が他の本来業務と兼務で、工数を割く余裕がない
- 差戻しリスクを避け、初回から高い精度で申請したい
- 複数拠点・グループ会社があり、横断的な制度活用を検討したい
なお、この切り分けは一度きりの判断でなくてよい。まずは自社申請を試してみて、想定より工数がかかりすぎる、あるいは制度の見落としが不安だと感じた段階でコンサルへの依頼に切り替えるという進め方も現実的だ。逆に、コンサルに依頼して申請の型を学んだうえで、翌年度以降は一部を自社対応に切り替えるという運用も考えられる。重要なのは、依頼するかどうかを一度決めたら固定するのではなく、自社の状況やリソースの変化にあわせて柔軟に見直すことだ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自社申請とコンサル依頼を制度ごとに使い分けることはできますか。
A. 可能だ。シンプルな制度は自社で対応し、要件が複雑な制度や自治体独自の制度はコンサルに依頼するといった併用も現実的な選択肢になる。
Q2. 時給換算する際、経営者自身が対応する場合はどう考えればよいですか。
A. 経営者の時間単価は一般的に従業員より高くなるため、経営者自身が申請業務に長時間関わるほど、実質コストは大きくなりやすい点に注意したい。
Q3. コンサルに依頼すれば工数はゼロになりますか。
A. 完全にゼロにはならない。就業規則や雇用契約書などの社内資料の提供、ヒアリングへの対応など、一定のやりとりは発生する。ただし書類作成や制度調査そのものは専門家が担うため、自社対応に比べて工数は大幅に圧縮できる。
Q4. 損益分岐点の試算はどの企業にも当てはまりますか。
A. あくまで目安であり、業種・従業員数・すでに整備されている書類の状況によって変動する。自社の状況に当てはめて個別に試算することをすすめる。特に就業規則や雇用契約書が未整備の場合、書類整備の工程だけで想定の倍以上の時間がかかることがあるため、自社の書類整備状況を事前に棚卸ししたうえで工数を見積もると、試算の精度が上がりやすい。
Q5. 工数コストを可視化するメリットは何ですか。
A. コンサル費用の「高さ」だけで判断せず、自社申請の隠れたコストと比較したうえで意思決定できる点にある。特に本来業務への影響を考慮すると、コンサル依頼のほうが総合的に合理的というケースも少なくない。
まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を
自社申請には制度調査・書類整備・窓口対応・差戻し対応という見えないコストが発生し、時給換算すると数十万円規模になることも珍しくない。受給額が大きく複数制度にまたがるほど、専門家への依頼が工数対効果で有利になりやすい。まずは自社の工数コストを試算したうえで、依頼すべきかどうかを判断したい。
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|---|---|---|---|
| ライト | 10,000円 | 受給額の25% | - |
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