会社都合退職・解雇があると助成金は受給できない?【2026年版】|離職理由が申請に与える影響

会社都合退職・解雇があると助成金は受給できない?【2026年版】 申請手続き・税務ガイド

結論から言うと、雇用関係助成金の多くは「事業主の都合による解雇等(特定受給資格者となる離職)を、一定期間内に出していないこと」を支給要件のひとつに掲げています。つまり会社都合退職や解雇があった事実そのものが即座にすべての助成金の受給を不可能にするわけではありませんが、対象となる期間内に該当する離職があると、その助成金の支給要件を満たさなくなる可能性があります。対象期間の考え方や離職理由の判定は制度によって異なるため、本記事で全体像を整理したうえで、個別の事案は労働局・社労士に確認することをおすすめします。

「特定受給資格者となる離職」を出していないことという要件

雇用保険の「特定受給資格者」とは、倒産や解雇など、会社都合により離職を余儀なくされた人を指す区分です。多くの雇用関係助成金では、支給申請の際に「支給申請日の一定期間前から支給決定日までの間に、事業主の都合により特定受給資格者となる離職をさせていないこと」といった趣旨の要件が設けられています。

この要件が設けられている趣旨は、助成金が雇用の維持・拡大や労働環境の改善を後押しする制度である以上、同時期に会社都合の離職を出している事業主には支給しないという整合性を保つためです。

対象となる離職の範囲や、何をもって「事業主都合」と判定するかは、雇用保険の手続き上の離職理由の分類に基づいて判断されるのが基本です。制度によって対象期間の長さや起算点が異なるため、申請予定の助成金ごとに支給要領を確認する必要があります。

助成金が不支給になる理由は離職理由以外にも複数あります。全体像は「助成金がもらえない・不支給になる理由TOP10【2026年版】」で整理しているので、あわせて確認しておくと申請前のチェック漏れを防げます。

退職勧奨・希望退職と解雇の違いが審査でどう見られるか

退職勧奨・希望退職・解雇は、いずれも事業主側の意向が離職のきっかけになっているという点では共通しますが、法的な性質や離職理由の判定は異なります。

  • 解雇:事業主が一方的に雇用契約を終了させる意思表示です。普通解雇・整理解雇のいずれも、原則として事業主都合の離職として扱われます。
  • 退職勧奨:事業主が退職を勧め、労働者が合意のうえで退職する形式です。合意退職ではあるものの、勧奨の実態が事業主からの強い働きかけによるものであれば、助成金の審査上は事業主都合に準じて扱われることがあります。
  • 希望退職(募集):業績悪化等を理由に事業主が退職者を募集し、労働者が応募して退職する形式です。制度の枠組みや実施の経緯によって、事業主都合として扱われるかどうかの判断が分かれます。

これらの区分は、書面上の手続きの名称だけでなく、実際の経緯(誰が退職を持ちかけたか、労働者に退職以外の選択肢が実質的にあったか等)に基づいて判定されるのが基本です。名目上「合意退職」としていても、実態が事業主主導であれば事業主都合の離職として扱われる可能性がある点に注意が必要です。

離職形態 法的性質 助成金審査上の一般的な傾向
解雇(普通・整理) 事業主の一方的な意思表示 事業主都合として扱われることが多い
退職勧奨に応じた退職 労使の合意退職 実態が勧奨主導であれば事業主都合に準じて扱われることがある
希望退職(募集)への応募 労使の合意退職 募集の背景・経緯により判断が分かれる
労働者本人からの自発的な退職 労働者の意思表示 原則として自己都合として扱われる

いずれの傾向も一般的な整理であり、最終的な判定は個別の事情による部分が大きい点に留意してください。

対象期間の考え方

「一定期間、会社都合の離職を出していないこと」という要件における対象期間は、制度によって起算点や長さが異なります。一般的に押さえておくべき視点を表に整理しました。

確認ポイント 内容
起算点 支給申請日、または計画届提出日など、制度ごとに定められた基準日から遡って計算されることが多い
対象期間の長さ 制度により数か月〜1年程度など幅がある。必ず該当制度の支給要領で確認する
対象となる離職の範囲 事業主都合による解雇、雇止め等のうち特定受給資格者に該当するものが中心
適用単位 事業所単位で判定されることが多いが、制度によって異なる場合がある

対象期間や適用範囲は制度・年度によって変わる可能性があるため、必ず申請予定の助成金の最新の支給要領で確認してください。この点は「助成金の『評価期間』『支給対象期間』の考え方」でも解説しているので、あわせて参照すると理解が深まります。

雇止め・退職勧奨・有期契約満了の扱い

離職理由の判定で迷いやすいのが、解雇以外の離職パターンです。それぞれの一般的な傾向を整理しますが、最終的な判定はハローワークが離職票の記載や実態に基づいて行うため、個別の判断が必要です。

離職のパターン 一般的な傾向 注意点
普通解雇・整理解雇 事業主都合として扱われることが多い 特定受給資格者に該当する可能性が高い
退職勧奨に応じた退職 事業主都合として扱われることが多い 「自己都合」として処理していても実態が勧奨退職なら扱いが異なる場合がある
有期契約の雇止め(更新拒否) 状況により事業主都合・特定理由離職者等に区分されることがある 契約更新の実績や更新への合理的期待の有無で判定が分かれる
有期契約の期間満了(本人が更新を希望せず終了) 自己都合に近い扱いとなることが多い 本人の意思確認の記録があるかが重要
自己都合退職 原則として特定受給資格者には該当しない 実態が異なる場合は離職票の記載と食い違うおそれがある

これらの区分はあくまで一般的な傾向であり、実際の判定は個別の事情によって変わります。判断に迷う離職があった場合は、離職票を発行する前に管轄のハローワークや顧問社労士に相談することを強くおすすめします。

有期契約の雇止め(更新上限・雇止め予告)の扱い

有期労働契約の雇止めは、助成金の審査で特に判定が難しい離職形態の一つです。労働基準法に基づく雇止め予告のルールでは、契約を3回以上更新している場合や、1年を超えて継続雇用している有期契約労働者について契約を更新しない場合、事業主は原則として契約期間満了の30日前までに雇止めの予告を行うことが求められています。該当するかどうかは個別の雇用状況によって異なるため、詳細は管轄の労働基準監督署に確認してください。

雇止めが助成金審査上どう扱われるかは、次のような要素によって判断が分かれます。

  • 契約に更新条項があり、更新への合理的な期待があったかどうか
  • 更新上限(契約当初から更新回数や通算契約期間の上限が明示されていたか)の有無
  • 雇止めの理由が事業主側の経営判断によるものか、契約条項どおりの終了か

あらかじめ契約書に更新上限を明記し、その上限どおりに契約を終了させた場合は、事業主都合の離職とは扱われにくい傾向があります。一方、更新を期待させる運用をしていたにもかかわらず一方的に更新を打ち切った場合は、実態に応じて事業主都合の離職と判定される可能性があります。更新上限の設定・運用に不安がある場合は、契約書の見直しも含めて社労士に相談することをおすすめします。

離職票の離職理由コードと事業主記入欄の重要性

雇用保険の離職票には、離職理由を示す「離職理由コード」が記載されます。このコードが実態と異なっていると、助成金の審査時に事業主都合の離職として扱われたり、逆に実態が事業主都合であるにもかかわらず自己都合として処理してしまい後で食い違いが発覚したりするリスクがあります。

離職理由コードは、離職者本人がハローワークで内容を確認・訂正できる仕組みもあるため、離職者と事業主の間で認識が食い違ったまま処理を進めると、後から助成金の審査に影響する可能性があります。離職票を作成する段階で、実態に即した離職理由を正確に記載することが、助成金申請への影響を避けるうえでも重要です。

雇用保険被保険者離職証明書には、事業主が離職理由を記載する欄と、離職者本人が異議の有無を記載する欄がそれぞれ設けられています。事業主記入欄の記載内容と、実際の退職の経緯・離職者本人の認識が食い違っていると、ハローワークでの確認や訂正の手続きが必要になることがあります。事業主記入欄には、退職に至った具体的な経緯(勧奨の有無、契約更新の状況など)を事実に即して記載することが、後々の助成金審査での齟齬を防ぐ観点からも重要です。記載内容に迷う場合は、離職票を発行する前に社労士に確認してもらうと安心です。

離職理由の記載に不安がある場合は、支給申請書の記入自体でつまずくケースも多いため「助成金『支給申請書』記入例・書き方完全ガイド」もあわせて確認しておくとよいでしょう。

対象期間中に該当者が出てしまった場合の申請スケジュールの立て直し方

会社都合の離職を既に出してしまっている場合でも、対象期間が経過すれば再び申請できるようになるのが一般的な考え方です。ただし、いつの時点で対象期間が終了し、申請が可能になるかは制度ごとの起算点・期間の定めによって異なります。慌てて申請せず、次の手順でスケジュールを立て直すことをおすすめします。

ステップ タイミング 主な内容
STEP1 該当の有無を確認 離職が発生した時点 離職理由が事業主都合(特定受給資格者に該当するか)を離職票等で確認する
STEP2 対象期間の起算点を確認 確認後速やかに 申請予定の助成金の支給要領で、対象期間の起算点・長さを確認する
STEP3 申請スケジュールの見直し 対象期間の把握後 対象期間が経過する時期を逆算し、申請予定日を調整する
STEP4 労働局・ハローワークへの事前相談 申請予定日が近づいたら 対象期間が経過しているか、申請可能な状態かを窓口で確認する
STEP5 支給申請書の提出 確認が取れた段階 通常の申請手続きに沿って支給申請書を提出する
  • 対象期間の起算点(離職日基準か、事業所として離職を出した日基準か等)を支給要領で確認する
  • 対象期間の長さを確認し、申請予定日がその期間を過ぎているかを逆算する
  • 判断に迷う場合は、申請を予定している助成金ごとに管轄の労働局・ハローワークへ個別に確認する

このステップはあくまで一般的な進め方の目安であり、実際の判断は制度・労働局により異なります。自己判断で申請を進めず、早い段階で窓口に相談することをおすすめします。

助成金の種類によって対象期間の長さが違う点

制度によって対象期間の長さが異なる理由は、それぞれの助成金が想定している支援の性質にあります。例えば、雇用の維持・職場定着を目的とした助成金では比較的長めの対象期間が設定される傾向がある一方、特定の取り組み(研修の実施など)に対する助成金では対象期間が短めに設定されることもあります。ただし、この傾向はあくまで一般的な特徴であり、具体的な期間の長さは制度ごとに支給要領で個別に定められています。

複数の助成金を並行して検討している場合、それぞれの対象期間の起算点・長さが異なる可能性があるため、「A助成金は対象期間が経過したがB助成金はまだ対象期間中だった」ということも起こり得ます。制度ごとに個別に確認し、まとめて一つの基準で判断しないよう注意してください。

なお、こうした個別の労務トラブルや離職理由の妥当性そのものについての法的な判断は、本記事のような一般的な解説記事の範囲を超えます。解雇や退職勧奨の進め方自体に不安がある場合は、労働局の相談窓口や社会保険労務士、必要に応じて弁護士など専門家に個別に相談してください。

FAQ|会社都合退職・解雇と助成金に関するよくある質問

Q1. 会社都合退職を1人でも出すと、すべての助成金が申請できなくなりますか?

A. 制度ごとに要件が異なるため、すべての助成金に一律で影響するわけではありません。対象となる助成金の支給要領で、離職理由に関する要件の有無を個別に確認してください。

Q2. 有期契約の雇止めは会社都合として扱われますか?

A. 契約更新の実績や更新への期待の合理性など、実態によって判定が分かれます。断定的な判断は避け、個別の事情をハローワークや社労士に確認することをおすすめします。

Q3. 離職理由コードは後から訂正できますか?

A. 離職者本人がハローワークで内容を確認し、実態と異なる場合は訂正の手続きが取られることがあります。詳細は管轄のハローワークに確認してください。

Q4. 会社都合の離職から何か月経てば助成金を申請できますか?

A. 対象期間の長さは制度ごとに異なります。申請予定の助成金の支給要領で起算点と期間を確認し、不明な点は労働局に問い合わせてください。

Q5. 退職勧奨と自己都合退職はどう見分けられますか?

A. 退職に至った経緯(会社側からの働きかけの有無など)の実態で判断されます。書面や面談記録などの実態に即して離職票を作成することが重要です。判断に迷う場合は専門家に相談してください。

まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を

雇用関係助成金の多くは、事業主都合の離職を一定期間出していないことを支給要件としています。対象期間の考え方や離職理由コードの扱いは制度ごとに異なるため、申請前の確認が不可欠です。制度理解から書類整備まで不安がある場合は、専属の社労士チームを持つ事業者に相談する方法もあります。

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