結論から言うと、動画制作費や広告クリエイティブ費用は「広告宣伝費」として多くの補助金で対象外になりやすい一方、制度によっては「販路開拓費」「PR・プロモーション費」として認められるケースがある。本記事ではこの線引きの考え方と、実際に動画・広告制作費が対象になりやすい代表的な補助金を整理する。
広告宣伝費が補助対象外になりやすい理由
多くの補助金では「広告宣伝費」そのものを単独の経費区分として認めていない。これは、広告宣伝は補助事業の実施と直接結びつく投資というより、日常的な営業活動の一部とみなされやすいためだ。ものづくり補助金のように設備投資を主目的とする制度では、広告費・PR費は原則として補助対象経費に含まれないことが多い。
補助対象経費全般の考え方に共通するポイントは「事業計画の遂行に直接必要な経費かどうか」だ。単なる会社紹介の動画やブランディング広告は、事業計画との直接的な関連性を説明しにくいため対象外と判断されやすい。採択されやすい申請書の作り方は助成金・補助金の「採択率を上げる」申請書の書き方を参考にしてほしい。
動画制作・広告クリエイティブ費用が対象になりやすい補助金
一方で、次のような「販路開拓」を目的とする補助金では、動画制作費・広告クリエイティブ費用が経費区分として明示的に認められていることがある。
| 補助金名 | 動画・広告費が対象になる位置づけ | 補助率の目安 |
|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 「広報費」として、チラシ・Web広告・PR動画制作費等が対象 | 2/3(一部枠は3/4) |
| IT導入補助金 | ECサイト・Webシステムに付随する制作費の一部が対象になる場合あり | 1/2〜3/4 |
| 事業再構築補助金(一部枠) | 新規事業の告知に直接必要な広報費が対象になる場合あり | 事業類型により異なる |
特に小規模事業者持続化補助金は、経費区分の中に「広報費」が明示されており、チラシ・パンフレット・ホームページ・PR動画などの制作費が対象になりやすい制度の代表格だ。申請方法の詳細は小規模事業者持続化補助金の申請方法|商工会議所への相談から採択までの流れを参照してほしい。
「広報費」として認められるための3つの条件
広報費として動画・広告クリエイティブ費用を計上する場合、審査で見られるポイントは概ね次の3つに集約される。
- 1. 事業計画(販路開拓計画)との整合性:どの顧客層に、何を伝えるために制作するのかが明確であること
- 2. 既存の会社紹介・ブランディングと区別できること:補助事業の成果物やサービスを直接PRする内容であること
- 3. 費用の妥当性:制作会社の見積書によって金額の根拠が説明できること
たとえば「新商品の紹介動画を制作し、Web広告で新規顧客層にリーチする」という計画であれば、事業計画との関連性を説明しやすい。逆に「会社のブランドイメージ向上のための動画」は、販路開拓との関連性が薄いと判断され対象外になりやすい。
動画・広告クリエイティブ費用の見積もり・証憑管理のポイント
広報費は他の経費区分に比べて金額の妥当性が判断しづらいため、審査・実績報告の両方で細かく確認される傾向がある。準備しておきたい書類は以下の通りだ。
| 書類 | 目的 |
|---|---|
| 制作会社からの相見積書 | 金額の妥当性の証明 |
| 制作物の仕様書・構成案 | 事業計画との関連性の証明 |
| 納品された動画・広告データ | 実際に制作されたことの証明 |
| 広告出稿の実績データ | 販路開拓の効果を示す補足資料(任意) |
また、広告費は「交付決定前の契約・支払い」が特に発生しやすい経費でもある。制作会社との契約日や着手日が交付決定日より前にならないよう、スケジュール管理を徹底したい。交付決定前着手の禁止ルールについては助成金・補助金の「交付決定前着手」禁止ルール完全解説であらためて確認しておきたい。
IT導入補助金・ものづくり補助金との違い
「動画制作費を補助金で賄いたい」という相談の中には、そもそも制度選定の段階でミスマッチが起きているケースも多い。IT導入補助金はシステム・ソフトウェアの導入が主目的であり、動画制作単体は対象になりにくい。ものづくり補助金も設備投資が中心であり、広報費のみでの申請は想定されていない。目的が「販路開拓・広報」であれば小規模事業者持続化補助金、目的が「デジタル化・システム導入」であればIT導入補助金というように、まず目的から逆算して制度を選ぶことが重要だ。IT導入補助金とものづくり補助金の使い分けはIT導入補助金とものづくり補助金はどちらを選ぶべき?併用可否と選び方を比較で解説しているので、あわせて確認してほしい。
動画制作会社を選ぶときに確認しておきたいポイント
補助金の対象として動画制作費を計上する場合、制作会社選びの段階から意識しておきたいポイントがいくつかある。まず、補助金の交付決定後に契約・発注する前提で見積もりを取得することが大前提になる。制作会社の中には「先に着手して、あとから補助金の申請をサポートする」という提案をしてくるケースもあるが、これは交付決定前着手にあたり補助対象外になるリスクが高いため注意が必要だ。
また、相見積書の取得を求められる制度が多いため、少なくとも2社以上から見積もりを取っておく必要がある。動画の尺・構成・修正回数・納品形式などの仕様を明確にした上で見積もりを依頼すると、審査の際に金額の妥当性を説明しやすくなる。制作会社によっては、補助金申請に慣れており、必要な書類(見積書・契約書・納品書・請求書のフォーマット)を補助金の要件に合わせて用意してくれるところもあるため、実績を確認しておくと安心だ。
動画・広告クリエイティブ費用の予算配分を考えるときの視点
補助金を活用して動画・広告制作を行う場合、経費全体の中で広報費に充てられる金額には上限比率が定められていることが多い。たとえば設備投資と広報活動を組み合わせた事業計画の場合、広報費だけに予算を偏らせると、審査で「事業の中心が広告宣伝になっている」と判断され、事業計画全体の説得力が下がってしまうことがある。
補助金を活用した事業計画を作る際は、あくまで「新商品・新サービスの投入」「新規顧客層への展開」といった本体の事業活動があり、その効果を最大化するための手段として動画・広告制作を位置づけることが望ましい。広報費単体を主目的にした計画よりも、設備投資や商品開発と組み合わせた計画のほうが、審査官に事業の全体像を理解してもらいやすく、採択率にもプラスに働きやすい。
SNS動画・ショート動画は補助対象になるか
近年はテレビCMや長尺のプロモーション動画だけでなく、SNS向けのショート動画を活用した販促を行う事業者も増えている。補助金の観点で見ると、SNS向けの動画制作費であっても、事業計画上の販路開拓の位置づけが明確であれば対象になり得る点は長尺動画と変わらない。ただし、SNS運用そのもの(投稿代行費、アカウント運用費など)は「広告宣伝費」というより「販売管理費」的な性質が強いと判断され、対象外になりやすい傾向がある。
補助対象として認められやすいのは、あくまで「制作」という一時的な支出であり、継続的な運用費用は制度上なじみにくい。SNS動画の制作を補助金でまかないたい場合は、制作費と運用費を切り分けて見積もりを取得し、補助対象となる制作費の部分を明確に区分しておくことが重要になる。
クリエイティブ制作の内製化と補助金活用のバランス
自社にクリエイティブ制作の内製体制がある企業ほど、補助金の活用で悩みやすいのが「内製費用は経費として認められにくい」という制度上の制約だ。外部の制作会社に委託する場合と比べ、自社の人件費を補助対象経費として計上できる制度は限られており、多くの補助金では対象外か、対象になっても厳格な按分計算が必要になる。
内製化によるコスト削減と、補助金による外部委託費のカバーは、それぞれメリットが異なる。恒常的に発生する制作業務は内製化でコストを抑えつつ、新商品発売時など単発かつ規模の大きいクリエイティブ制作については、補助金を活用して外部委託するという使い分けを検討する企業も多い。事業計画を立てる段階で、どの制作業務を内製し、どの制作業務を補助金の対象として外部委託するのかを整理しておくと、審査の説明もしやすくなる。
FAQ|動画制作・広告クリエイティブ費用と補助金でよくある質問
Q1. YouTube広告の出稿費用そのものも補助対象になるか。
制度によって異なる。小規模事業者持続化補助金では、広報費の一環としてWeb広告出稿費が対象になる場合がある。ただし継続的な運用型広告費は「販路開拓のための一時的な支出」という位置づけから外れやすく、対象範囲は公募要領で確認する必要がある。
Q2. 自社で内製した動画の制作費は補助対象になるか。
外部への制作委託費と異なり、自社人件費を経費として計上するのは制度上難しいことが多い。動画制作費を補助対象にしたい場合は、外部の制作会社に委託し、見積書・請求書を残す形が基本になる。
Q3. ブランディング目的の企業紹介動画は対象になるか。
販路開拓や新規顧客獲得との関連性が説明しにくいため、対象外と判断されやすい。同じ動画制作でも「新商品の販促」「新規顧客層へのアプローチ」など、事業計画上の目的を明確に位置づけることが重要になる。
Q4. 広報費の上限額はどのくらいか。
制度・年度によって異なり、小規模事業者持続化補助金では補助対象経費全体に占める広報費の上限比率が定められることがある。最新の公募要領で必ず確認したい。
まとめ|補助金の申請はTrue Partnersに相談を
動画制作・広告クリエイティブ費用は、単なる「広告宣伝費」としてではなく「販路開拓のための広報費」として事業計画に位置づけられるかどうかが対象可否の分かれ目になる。制度選定や経費区分の判断に迷う場合は、専門家に事前相談してから申請計画を立てるのが安全だ。
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