助成金申請と役員・取締役の扱い【2026年版】|役員は対象労働者になるのかを解説

助成金申請と役員・取締役の扱い【2026年版】 雇用・採用助成金

結論として、雇用関係助成金の多くは「雇用保険の被保険者である労働者」を対象としており、取締役などの役員は原則として対象労働者に含まれない。ただし、使用人兼務役員など一定の条件を満たす場合は例外的に対象となるケースもある。この記事では、助成金における労働者の定義、役員が対象外とされる理由、例外的に対象となりうるケース、家族従業員との違いを整理する。

助成金における「労働者」の定義

雇用関係助成金の多くは、雇用保険の適用事業所において、雇用保険の被保険者として雇用されている労働者を支援対象としている。ここでいう「労働者」とは、事業主との間に使用従属関係があり、賃金を支払われて労務を提供する者を指す。雇用契約に基づいて働き、労働基準法・雇用保険法上の労働者として扱われることが前提になる。

一方、取締役や監査役といった役員は、会社法上「委任契約」に基づいて経営を担う立場とされ、雇用契約に基づく労働者とは法的な位置づけが異なる。この違いが、助成金における役員の取り扱いを理解するうえでの出発点になる。

役員(取締役)が対象外とされる理由

役員が原則として対象労働者に含まれない理由は、雇用保険制度の建付けにある。雇用保険は、労働者が失業した場合の生活保障や雇用の安定を目的とした制度であり、経営者側の立場にある役員は、原則として雇用保険の被保険者にはなれない。

助成金の多くは雇用保険料(雇用保険二事業)を財源としており、被保険者である労働者の雇用の安定・処遇改善を図ることを目的として設計されている。そのため、経営の意思決定に関わる立場である役員は、制度の趣旨から対象外とされているのが基本的な考え方だ。

例外的に対象となりうるケース

すべての役員が一律に対象外というわけではなく、実態として労働者性が認められる場合には、例外的に雇用保険の被保険者となり、助成金の対象となりうるケースがある。代表的なものを整理する。

ケース 概要 助成金の対象となる可能性
使用人兼務役員 取締役でありながら、部長・工場長等の従業員としての職務も兼ねており、報酬の大部分が労働の対償としての賃金にあたる場合 労働者性が認められれば雇用保険の被保険者となり、対象となりうる
監査役 会社法上、原則として従業員を兼務できない役職 原則として対象外
非常勤役員 経営への関与が実質的に乏しく、名目的な役員にとどまる場合 雇用保険の被保険者性の判断は個別事情による
代表取締役 会社の経営責任を負う最高責任者 原則として対象外

使用人兼務役員に該当するかどうかは、役職名だけで機械的に判断されるものではなく、実際の職務内容、指揮命令を受ける立場にあるかどうか、報酬のうち労働の対償部分がどの程度を占めるかといった実態に基づいて判断される。この判断は個別性が高いため、該当しそうな役員がいる場合は、事前にハローワークや専門家に実態を踏まえて確認することが望ましい。

家族従業員・同居親族の扱いとの違い

役員の扱いと混同されやすいのが、事業主と同居している親族(家族従業員)の扱いだ。同居の親族は、役員でなくとも、原則として雇用保険の被保険者になれないという別のルールが存在する。ただし、こちらも一定の条件(他の労働者と同様の就業実態がある、賃金が労務の対償として支払われている等)を満たせば、例外的に被保険者として認められる場合がある点は役員のケースと似ている。

区分 原則 例外的に対象となる条件の考え方
取締役等の役員 雇用保険の被保険者になれない 使用人兼務役員として労働者性が認められる場合
同居の親族 雇用保険の被保険者になれない 他の労働者と同様の就業実態・賃金体系が認められる場合
一般の正社員・契約社員 雇用保険の被保険者となる

役員か家族従業員かにかかわらず、「実態として労働者と同様に働き、賃金の対償性が認められるか」という共通の視点で判断される点は押さえておきたい。

役員変更が助成金申請に与える影響

役員の異動(就任・退任)は、助成金申請において複数の観点から影響しうる。

  • 支給要件確認申立書への影響:役員名簿の添付が求められる制度では、役員変更後は最新の名簿への更新が必要になる。
  • キャリアアップ等、雇用形態の変更を伴う助成金への影響:従業員が役員に就任した場合、その時点で雇用保険の被保険者資格を喪失する可能性があり、対象労働者としてカウントできなくなることがある。
  • 中小企業の要件判定への影響:役員報酬の変更が、資本金・従業員数等と並ぶ中小企業要件の判定に直接影響するわけではないが、事業実態の変化として申請書類に反映すべき場合がある。

特に、助成金の対象期間中に従業員が役員に昇格するケースでは、その時点で雇用保険の被保険者資格がどうなるかを事前に確認しておかないと、想定していた助成金が受給できなくなる可能性がある点に注意したい。

役員の扱いを誤ると起きるリスク

役員を誤って対象労働者として申請してしまった場合、審査段階で指摘を受けて不支給となるだけでなく、支給決定後に発覚した場合は不正受給として扱われ、返還を求められる可能性もある。悪意のない誤解であっても、結果的に不適切な申請となってしまうリスクがあるため、対象者に役員(特に使用人兼務役員の可能性がある者)が含まれる場合は、申請前に必ず被保険者資格の状況を確認する必要がある。

よくある質問(FAQ)

Q1. 代表取締役は助成金の対象労働者に一切なれませんか?

原則として対象外となる。代表取締役は会社の経営責任を負う立場であり、雇用保険の被保険者にはなれないと整理されているためだ。

Q2. 使用人兼務役員かどうかは誰が判断するのですか?

最終的にはハローワーク等が、役職名ではなく実際の職務内容や報酬の内訳といった実態に基づいて判断する。事前に確認しておくと申請時のトラブルを避けやすい。

Q3. 従業員が期中に役員に昇格した場合、それまでの助成金の要件に影響しますか?

制度や助成金の対象期間の定め方によって影響の有無が異なる。昇格のタイミングと雇用保険の被保険者資格の喪失時期を確認し、申請中の制度への影響を個別に確認する必要がある。

Q4. 家族経営の会社で、同居の親族を助成金の対象にすることはできますか?

原則としてはできないが、他の労働者と同様の就業実態・賃金体系が認められる場合は例外的に対象となりうる。実態の確認が必要な点は役員のケースと同様だ。

Q5. 役員の扱いに不安がある場合、どこに相談すればよいですか?

まずはハローワークの窓口で個別の実態を踏まえて確認するのが基本だが、複数の助成金を並行して活用しており判断が複雑な場合は、社会保険労務士など専門家に相談する方法もある。

まとめ|助成金・補助金の申請はTrue Partnersに相談を

助成金の多くは雇用保険の被保険者である労働者を対象としており、取締役等の役員は原則として対象外だが、使用人兼務役員など実態次第で例外的に対象となる場合もある。役員の異動や兼務の実態を誤って申請すると不正受給リスクにもつながるため、判断に迷う場合は専門家への相談も検討したい。

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